橋下市長は足場を固めよ。 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

この時期は夏休みムード満開で欧米発のニュースも割と限定的となっておりますのでつい、国内の事件に目がいってしまいますが、今日はつまらないことでつまづいた橋下徹大阪市長についてコメントしたいと思います。


まず、私は週刊文春を褒めます。このところ文春は妙に大スクープを連発しております。原辰徳1億円支払い事件、小沢氏、夫人から三行半、日経社長の不倫疑惑などなど。そして、今回の橋下市長の不倫については本人があっさり敗北宣言をしてしまっています。こうなれば読者からすれば新潮より文春を買いたくなる人が圧倒的に増えるのではないかと思います。

不思議なことに過去のスクープ、小沢、原、日経共にほとんど後追い記事が出ていません。小沢氏は後追いをするメリットよりあとで苛められるデメリットを嫌っているのでしょうか? 原氏の場合は渡辺恒雄氏の圧力だろうと想像します。日経は先週、文春が発売される際、いつもは新潮と仲良く隣どおしで広告を載せあっているのですが、その日だけはなぜか新潮の広告の隣には日経の自社公告が入り文春の広告ははずされています。そして、社会面の右端に囲みで文春の記事に関する反論が書かれていました。

ただ、不思議だったのはその数日後、日経に文芸春秋の大きな広告が入っていましたので同じ会社の雑誌で片や訴訟を匂わし、片や大々的な広告とは日経も何処まで本気なのかと思わず疑ってしまいました。つまり、文春のいいようにやられているということでしょうか?

さて、橋下徹市長の今回のお手つき、というか、過去のお手つきを暴かれた点は面白くない結果となる気がいたします。日本独特の「出る杭は打つ」の典型的状況になっています。私は数日前に書いたブログで橋下氏は国政に出るより足場を固めよと書いたばかりでした。

メディアは橋下氏を台風の目という扱いでポジティブに捉えていますが、彼は相当たくさんの敵がいることを認識せねばなりません。どれだけ正論で押し続けても必ずこう着状態になったり三歩前進二歩後退の状況になるものなのです。これはどんな人の人生でも同じです。常に右上がりを続けることは絶対にありません。確か、橋下氏が自分で「旬」という言葉を以前使っていたと思います。そういう意味では残念ながらしばらくディフェンスに入らなくてはいけない時期にあるようです。

彼が最もブレたのは大飯原発の件だったと思います。大阪経済界から相当の突き上げがあったものと思われますが、結局、いつも強気そうな態度でも案外もろさもあるということです。今日の不倫に関するインタビューはテレビで拝見しましたが情けないというのが私の第一声であります。

ところで今日の日経電子版に「大阪都構想、「実」をとっても「名」はとれず」という記事が出ています。要は大阪は特別区は認められる可能性が高いが、名称は大阪都にはならないかもしれないという内容です。橋下氏の努力で大阪にいわゆる特別区が設置されることで二重行政的な無駄が省けることにはなりそうです。しかし、特別区があるから大阪都と呼ぶのは無理があると思います。

記事にもありますが、「都」とは「みやこ」、つまり元首がいるところか京都のように歴史的に「都」をつけても支障がない場合はよいと思いますが、大阪を都と呼ぶ理由付けは十分ではないように思えます。

世界に売り込むために「都」の名称が欲しいというのは私にはまったく理解できない話です。ロンドンでもパリでもニューヨークでも特別な名前はついていません。アメリカならばせいぜいワシントンDCだけが特別扱いになっています。大阪を海外で売り込むのはそれこそ「名」ではなく「実」で頑張ってもらいたいものです。

橋下氏は中央の政治家が一目も二目も置く人です。だからこそ、秋の政界の動きの中に敢えて飛び込まず、静観しながら動くときに踏み出すぐらいのスタンスでよいのではないでしょうか?橋下氏は日本にとって重要な人材がゆえにここは慎重にことを進めるべきかと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。