新卒の就職活動を経験して --- 近藤 洋太

アゴラ編集部

就職難という時代でも、未来は明るい」という記事を受けて、直近で就職活動を終えた立場から何か発信したいと思って投稿した。初投稿なので簡単に私の立ち位置の説明をする。

私は都内の私立文系の大学に通う4年生であり、来年からは学生に不人気な「流通・小売業界」で働く可能性が高い。就職活動は3年の秋から始めており、初内定をいただいたのが6月半ばだが、今も就職活動は継続している。実に大学生活の4分の1近くを就職活動で費やしていることになる。そして、私もまた、この就職難でも未来は明るいと思う者のうちの一人である。


1年近く就職活動を続けて感じたことは「茶番」であるということ。社会に出てからの競争とはつまるところ差別化である。他社よりどこが優れているのか、どれだけ優れたものを提供できるか。どの企業の説明会に足を運んでも、口を揃えて他社との差別点を言う。しかし、こと採用活動においては、全員が同じようにリクルートスーツを身にまとい、同じように説明会に赴き、同じようにエントリーシートを書き、同じように面接を受ける。差別化のさの字すら出てこない。

これは高度成長期に形成された日本型雇用慣行が今でも続いているためである。終身雇用制度が崩壊し、定年退職という出口の部分は変わってしまったのに、新卒入社という入り口の部分に何も変化が無いことが、違和感を生んでいるかもしれない。

よく大手病だとか、中小じゃだめなのかなどという議論が起こるが、現状の採用活動のあり方、企業経営のあり方では、その業界精通した人が身近にいない限り、学生に差は分からないので、スケールメリットのある大手に人が集まるのは当然のことである。「能力があるなら中小企業を育てることも可能だから楽しいぞ」という意見も、不況しか知らない自分たちの世代には感情論で言えば難しいことである。

就職活動をしていて唯一良かったと思える点は、大企業からベンチャー企業まで幅広く選考を受けることができたということ。一般的に優秀とされる大企業内定者と、ユニークな採用を行なっているベンチャー企業の志願者(内定者ではなく志願者)との実力差を感じなかったのである。学生もその差がもちろん学生目線の捉え方なので、働く者からしたら差を感じるかもしれないということを断っておく。

何故未来が明るいと感じられるかというと、大企業に囲われ青田買いされていた人材が、確実にベンチャーや中小企業に流れているためである。完全に私見だが「大企業に見切りをつけている人」も少数ながら存在するのではないだろうか。だとしたら未来はとても明るい。もちろん大企業にあぶれて仕方なく中小に行く人もいるだろうが、それでも良いと思う。失敗を経験している人は次に同じ失敗をしないように努力する可能性が非常に高いから。

我々はこれからどうすれば良いのか。人手不足の業界・企業は、学生が就職したくなるような環境を整えること。私がこのまま流通・小売業界に行くことになるなら、10年以内に優秀な学生がこぞってエントリーするような企業に変えていこうと思う。それは雇用環境だったり給料だったり、はたまた企業イメージを変えなければいけないのか、やることは山積みだろうが、ひとつずつ改革をしていく。

学生は、大学に進学して卒業と同時に企業に就職する、という道以外の選択肢を探すための努力をしなければならない。今回は触れなかったが、日本で起きている賃金の低下は、世界的で見れば格差の是正にすぎない。ドメスティックだった日本の環境がグローバル化している事を考えれば、世界のどこにいても’個人として’活躍できるだけの能力を身につけなければいけない。

若者は個人のスキルを鍛えて、個人の力で戦っていけるだけの実力をつけようとするべきではないか。大人は口だけで若者に文句を言うのではなく、『こんな成功例もあるよ』ということを行動で示すべきではないだろうか。そうすれば日本の未来はもっと明るくならないだろうか。

近藤 洋太
私大文系 商学部4年