日本人にはピンとこない欧米の現金嫌い --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

一昨日のブログで欧米の銀行は口座管理料をかけるのが普通なのに日本ではなかなかそこに踏み込めない、ということを書かせていただきました。十分には説明しませんでしたが、これには現金に対する意識が違うということをもう少し説明したほうがよいと思います。

私は時としてカナダの銀行で日本円で数十万円程度を現金で引き出すことがあるのですが、カナダドルで4000~5000ドルの現金が銀行の支店にない事がままあります。日本の方には信じられないことだと思いますが、事実です。嘘だと思ったらやってみてください。「すみません、当行には本日は十分な現金がありません。」「ではいつならありますか?」「2営業日ほど後に来ていただければ確保しますが。」


内心ふざけるんじゃない、と思いながら顔で笑い、「では本店に聞いてもらえませんか?」と催促すると「本店の明日の朝、開店直後なら大丈夫です。」といわれます。この会話はカナダで最も大きな銀行のバンクーバーダウンタウンの支店での会話です。

欧米ではこれぐらい現金需要がないのです。例えば、私のところのカフェ部門。一日の売上げに対して現金とデビットカードの比率は大体6:4です。コーヒー買う小銭も持っていない人が多いのです。しかもデビットカードの比率は年々上がっています。ちなみにカフェでのクレジットカード払いは最近激減しています。

一方の駐車場部門。こちらの支払いは6割がクレジットカード。2割が現金で2割がデビットカードです。一体カナダ人は現金、デビット、クレジットの線引きをどうやっているのかと思ってしまいますが、感覚的にはデビットは既にお財布感覚でクレジットはちょっと高いと思われる20ドル程度を超える金額に使うような感じです。

この流れで行くと現金の肩身はより狭くなっていくわけですが、今年の秋には更にビックリすることになります。それはカナダは今年の秋から1セントコインを鋳造しなくなるのです。つまり、いつも財布の中で一番数が多いあのコインが少しずつなくなっていくのです。理由は利用価値が少ないことと鋳造コストに見合わないということです。

では実務ではどうするかというとコインがなくなったのちに商品を買うとレジで代金と消費税(HST)を含めた総額が例えば8ドル53セントだとします。この場合は店は8ドル55セントにして計算します。仮に8ドル52セントなら店は8ドル50セントにして計算します。これにより店側も消費者側も統計的に考えればどちらも損をしない事になります。

ちなみにこれは現金払いの場合だけであり、小切手やデビット、クレジットカード払いなどは適用がなく、従来どおり、セント単位まできちっと計算することになります。

発想としては現金が嫌いな欧米らしいものだと思います。日本ではまずその案すら浮かばないと思います。ですが、コインがなくなれば私は嬉しいです。なぜならあのペニー(1セント)をバッチ締め(レジ閉め)で数えたり銀行に両替に行かなくて済むからです。現金商売をする場合このコインの勘定は面倒くさいもので、それゆえに駐車場部門は税込みの1ドル単位の料金体系に変えてしまい、25セント以下のコインが出ないようにしています。これで会計の間違いも減りますし、工数もぐっと楽になるのです。

発想の転換といえばそうなりますが、この辺は日本にはないユニークさで面白いと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。