「いじめ」根絶に向けての具体論を議論しては?

山口 巌

相も変わらず「いじめ」関連の記事がネットに溢れている。加害者が悪い(当たり前の話であるが)から始まり、教師、学校の対応が悪い、教育委員会が保身に走り問題をうやむやにしている、警察が被害届を受理しなかったはおかしい、と続き、最近では加害者保護者の子供の躾がなっていないと言う所まで来た様である。


一々が筋が通った話であり、尤もであると思う。しかしながら、こんな悪者探しを何時までも続けていた所で、問題の根本解決には至らないと予感するのも、今一方の実感である。もうこの辺りで、所詮堂々巡りに過ぎない問題指摘は止めて、具体的な解決策を議論すべきと考えるのである。

先ず、認識すべきは、「法の下、罪を確定し、確定した罪に応じた罰を与える」事が唯一「いじめ」根絶に向けての処方箋であると言う事実である。

次いで、これを可能とするスキームを確定し、効果測定を実施しながら確実に実行する事である。

私は、必要なアクションは下記二点で充分と考えている。

先ず第一は学校の可視化である。大津の件でもそうであったが、死人に口なしに便乗して、学校、教育委員会関係者は「いじめと自殺の因果関係が立証できない」を金科玉条として保身に走る。長きに渡り学校を「聖域」として来た弊害以外の何物でもない。

就いては、その「聖域」とやらにweb カメラを設置してはどうだろうか? そもそも、教室を始めとして学校を地域社会や保護者から分離し、「死角」に置く事の意味や意義を再考すべきと考えるのである。

今一つは、実際に「いじめ」に遭った場合の「対応フロー」の明確化である。子供が自殺に迄追い込まれるのは、
「いじめ」が過酷で辛いと言うのは当然であるが、「いじめ」を受けた生徒が如何に対応したら良いか判らないと言うのも大きな原因と考える。

教師は「聖職」であり、先ず担任教師に相談すべきと言う「建前」かも知れないが、実際には「無責任」で「無能」な担任と言うケースが多いのではないか? 今回の大津のケースを見ても担任教師を筆頭に、学年主任、教頭、校長そして学校を管理監督すべき教育委員会も全て機能不全としか思えない。

就いては、「いじめ」対応から「学校」、「教育委員会」を除外し「警察」の一元管理にすべきと思う。

フローの第一は、被害を受けた生徒が「警察」が作成した「いじめ報告書」に必要事項を記入し、送信ボタンをクリックする事で始まる。尚、必要事項は大体、氏名、所属(学校名、学年、クラス)、連絡先(電話番号、メールアドレス)、「いじめ」の具体的内容(何時? 何処で? 誰に? どの様な被害を受けたか?)、医師の診断書の有無、辺りで良いかと思う。

次いで、「いじめ報告書」を受信した警察は、日時、場所を特定しWebカメラ映像を解析し「いじめ」の実態を確認する訳である。仮に、暴力行為が担任教師も居る教室で行われたとしたら、当然の事ながら「いじめ」の首謀者と共に、教師も何がしかの刑事責任に問われるべきであろう。

現在の学校システムは、学校は「聖域」であり、教師は「聖職者」であると言った、何の根拠もない誤解の上に構築された「バグ」の多いシステムと思う。そして、その被害者は「いじめに」遭遇する生徒である。

学校を「聖域」とせず可視化し、教師を「聖職者」とせず、場合に依っては厳しく「刑事責任」を問う事で高い抑止効果が期待出来る筈である。又、仮に「いじめ」が起こった場合であっても、フローを警察に一元化する事で、情実を挟む事無く「いじめ」の有無と中身の特定が可能になると思う。

先ずは、モデル校を幾つか選定した後実行し、「効果測定」を実施してはどうだろうか?

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役