テルモ社長が出した「信書」の意味 --- 山口 利昭

アゴラ編集部

私は特にこの会社を「よいしょ」するつもりもなく、また何の利害関係もございませんが、どうしてもその一挙手一投足が気になります。またまたオリンパス社に経営統合を提案しているテルモ社の件ですが、今週号の週刊ダイヤモンド18頁「短答直入」のコーナーにて、同社の社長さんが経営統合案の合意前公表についての真意を語っておられます(ダイヤモンド・オンラインにも掲載されているようです)。


もちろん(テルモ社がオリンパス社に対して損害賠償請求訴訟を提起しなければならなくなった事情とも関係しているとは思うのですが)、オリンパス社への経営統合案を事前公表すること自体、上場企業としては、たいへん異例の手法であります。ただ、この社長さんのインタビュー記事で気になりましたのは、オリンパス社の4月の臨時株主総会による経営刷新の結果をみて同社社長が「提携先を選ぶにあたって、(オリンパス社の)経営陣の中での合意形成が重要性を増している」と考えた、という点であります。テルモ社は、公表された経営統合案とは別に、オリンパス社の監査役と社外取締役には今回の経営統合案の背景や効果、統合への想いなどをつづった手紙を送ったということのようです。つまりオリンパス社の非業務執行役員に対してのみ、個別に信書によってテルモ社が考える同社の企業価値向上策について力説をされているのだそうです。

たしかにオリンパス社にとって重要な経営判断となる事項ですから、非業務執行役員に対してテルモ社との提携(統合)の有利さを説得する、ということは当然のことでしょうし、とりわけ独立性に配慮をした社外取締役制度を導入した企業に対する対処法としては正論かとは思います。しかし自社の取組みではなく、交渉相手企業のガバナンスへの期待をこめて、このように信書を送るという行動に出るというのは、まさに異例の手法ではないかと思われます。このような信書を受け取ったオリンパスサイドとしては、これをどう取り扱うのでしょうか。提携先選定作業において、社外取締役だけの会合などを設けたりするのでしょうか(どなたか、こそっとお教えいただけますとうれしいのですが……笑)

しかし、こういった手法を考案して、実行に移すのはテルモ社の社長さんの実行力なのでしょうか、それとも3名おられる社外取締役さんのご意向が反映されているのでしょうか(NTTドコモにおける「アイモード」の生みの親でいらっしゃる方なのかな?)最近の同社の企業行動を外野から拝見しておりますと、この会社はガバナンスという意味では、相当に先を行く企業であり、そのあたりの経営判断については、取締役の方々で相当にコンセンサスが得られているのではないかと推測されるところです。映像分野における事業提携の話も含め、今後もオリンパス社の事業提携に関する経営判断には関心が寄せられるところであります。


編集部より:この記事は「ビジネス法務の部屋 since 2005」2012年8月27日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった山口利昭氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はビジネス法務の部屋 since 2005をご覧ください。