責任を取らないシャープ経営陣が再建策を出せるのか

山田 肇

高橋洋一氏の論評「シャープ“惨状”を招いた日銀無策…超円高はなぜ起きたか」を読んだ。「円安に誘導するため日銀は一層金融緩和すべき」という論旨で納得し難いが、冒頭の電機大手への言及が気になった。

国内電機大手の2012年4~6月期決算では連結ベースで8社中5社が赤字となった。これだけ業界全体が不振となると、各社の個別事情ではなく、世界景気減速や円高傾向というマクロ経済の影響である。

電機大手不振の原因の一つはテレビが売れなくなったことだ。電子情報技術産業協会の統計によれば、薄型テレビの国内販売台数(2012年上半期)は数量ベースで前年比16.9パーセント。デジタル化特需が終わり、市場はたった1/6になった。輸出も3割減で、半期で合計3000億円ほど市場が縮小している。


需要の停滞を経営陣は見込んでいなかった。シャープの株主総会を伝える東洋経済を読めばわかる。「亀山、堺工場の投資を決定した際にどのような需要予測をしたか。なぜ過剰投資をしてしまったのか」という質問に、奥田社長は次のように回答した。

堺の工場に対する投資の判断は2007年に行った。その当時は液晶テレビについてはあらゆる調査会社のデータを参考にしながら、需要は自ら作っていくものだという意識もあわせて需要予測を行った。その後、リーマンショックや円高もあり液晶テレビの価格は下落し、国内や中国の需要も減った。また円高ウォン安もわれわれに大きなインパクトを与えた。

需要停滞のリスクが考慮されていなかったのは明らかだ。シャープの再建策を仲間で議論したが、友人たちが指摘したのは「まず経営陣が責任を取れ」であった。確かにその通り。失敗した経営者が再建に奔走しても市場は信用しない。

高橋洋一氏は、ダメ経営陣を擁護して、すべてを日銀の責任にするつもりなのだろうか。高橋氏には是非思い出して欲しいのだが、2009年にクライスラーとGMが破たんしたとき誰かFRBが間違っていたと言っただろうか。国内電機の衰退も同様に、外部要因よりも内部要因(経営責任)を追及すべきだ。

山田肇 -東洋大学経済学部-