多くの方がご存知の通り、ルーマニアで日本の女子大生が強姦殺人に遭うという事件が発生した。
おそらくここまで話題になった理由として、上記の2ちゃんねるのまとめサイトが挙げられるだろう。事実、自分もここでこの事件を知ったのだが、よくよく考えてみれば邦人が海外で事件に巻き込まれるというケースはこれまでにもいくつかあった。しかしこれが自分のtwitterやfacebookのTLで話題になっている理由の一つに、上記サイトでもリンクが貼られていたSNSアカウントの存在が挙げられる。
この事件が起こる前にルーマニアに入ることを明言しており、奇しくもルーマニアに入国することを報告するツイートが、公に残された彼女の最後の言葉となった。多くのツイートの中には、友人に不安を明かすものもあった。
これが発見されたことによって、被害者の生前の声がダイレクトに僕達に伝わってしまったことによって、この事件とは直接的に関係を持たない人と被害者を繋げてしまったという点が今回の事件で明らかになったSNSの側面ではないかと僕は考える。
恐らく、この面識もない被害者の女性に対して、日々のニュースで報じられる(そういう状況が続いているのも好ましくないのだが)事件の被害者以上に、多くの人は強いシンパシーを覚えたのではないだろうか。自分自身、twitterやfacebookのアクティブユーザーだが、彼女をフォローしていたわけではないのにも関わらず、何か身近な人が被害にあったような、そんな生々しさを感じた。と、なると彼女と直接の面識は持たずとも、SNS上で交流があった人たちが感じたショックというのは想像に難くない。
そしてさらに問題になったのが、twitterだけに留まらずfacebookで写真や家族構成などの、被害者の個人情報が2chを中心としたネット上で晒されたことだ。本来の目的とは違う所でそういった情報を流用すべきではないし、散策した輩には間違いなく、面白半分でこう言うに及んだ者もいるだろう。更に、生前のtwitterのリプライ(返信)を元にして被害者の友人にまで情報を迫ったり、twitter上で言葉をかけるものいた。その中には心無い発言もあった。現在は友人もアカウントを削除し、被害者本人のtwitterとfacebookのアカウントは規制がかけられている。テレビやネットのニュースでも本人の写真が使われていたが、これもfacebookあたりから引用されたものなのでは……とかも思ってしまう。
こういった一連の流れを見て、SNSの怖さに加えて、今まで経験することのなかった近接感を感じることが出来た、というのが本音である。今回はそれが良くない方向、というか後味の悪い方向に動いてしまったが、この近接感がポジティブな出来事につながれば、と望んでいる。
そういったSNSの側面に加えて、海外へ渡航する際の危機管理能力の重要性もこの事件で学べることの一つだ。最近、自分の周囲でも一人でバックパッカーとして海外へ旅行に行く女性が多く、先述したようなtwitterのフォロワーさんでもそういう活動をしている人をちらほらと見かける。しかし、彼女たちも何度かトラブルには巻き込まれていたが、無事に帰国することが出来ていた。つまり、SNSの流行でこういった”一人旅”をする人物が多く存在が以前と比べて可視化され、そして彼らがその旅行を楽しんでいることをSNSで報告することで、海外に一人で出ることのハードルが下がってきたように思える。
そこで、今回の事件である。やはり一人で海外に赴くことというのは非常にリスクを伴うもの。治安が良い日本という国に生まれ育ってきたのであれば、海外に出たその瞬間から日本で享受した環境は特殊だったと思い、一つ一つの好意に細心の注意を払って行動しなければならない。それを改めて教えてくれたのがこの事件と言えよう。
僕自身が正直に思う所だと、SNSでは全部が全部とはいえないが、ポジティブな発言が多い。少し悪い言い方をすれば自分の置かれている状況・体験を自慢する場として、その喜びを写真やテキストにして表現する側面が強いように思える。mixiやfacebookで旅行の写真をアップしたりするのが代表的だ。もちろん最初に述べたようにそれが全てではない。けれど、友人や直接の知り合いではないtwitterのフォロワー達の、そういった投稿を見て羨望の念に駆られることというのは誰もが一度は経験したことがあるのではないだろうか。
その思いが強くなってしまい、例えば憧れていた海外一人旅を始めることができたとき、望んでいたことが達成出来たことによって、脇が甘くなってしまう。今回と同様とまではいかずとも、スリくらいの被害にあった人はいるだろう。海外旅行に際する危機管理についても、もう一度見なおさなければならない。
このルーマニアの事件が、僕達に提起してくれた問題は数多く有る。今回ここで挙げた二つ以外にも、存在するかもしれない。
竹中 玲央奈
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