日本の「おもてなし」は世界に通用するビジネスになる --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

日経ビジネスの特集にアフターサービスランキングが出ていました。この特集は毎年行っているものでランクに関連する業界はこの調査結果で喜怒哀楽、ランクを下げたところは必死でランクアップを狙います。そしてその結果が出るのは新製品を投入するよりもはるかに時間がかかり、2、3年後にようやくその効果が現われたりします。


このランクに関係なく外国に住んでいる者にとって日本のサービスの高さは他を寄せ付けないところがあります。極端な話、ランク外の企業でも外国企業に比べればはるかに良い気がいたします。

何故日本のサービスが良いのか、理由はたくさんあるでしょう。企業戦略として重視していること、お客様は神様ですという根本精神は筆頭に上げられると思いますが、やはり、私には日本人がずっと持ち続けているもてなしの心がビジネスに根付いているのではないかと思います。

私の会社の従業員は日本人が主体です。英語が決して滑らかではない人も多いのですが、それでも日本人を雇うのは顧客からの圧倒的支持があるからなのです。お客様から「オタクの店はいいよね、従業員がすごくいい」。あるいはライバルのカフェのオーナーから「どうやったらこんなに素晴らしい従業員を雇えるのか?」と聞かれることはしばしばです。

そのもてなしの心は流暢ではない英語のハンディキャップを埋めても十分におつりが来ると思っています。もちろん、業務に差しさわりがあるようでは困ります。例えば先日(※編集部注:カナダの)某居酒屋で白人の3カップル6名が私の隣の席につきました。「カナダ水準のサービス」を期待していたと思うのですが、あいにく店が混んでいたこともありサーバーの手は廻らず、ドリンクは出ず、フードも遅れがち、ホストと思われる女性がかなりむっとした口調でサーバーさんに当たっているのですが、サーバーさんがその空気を読み取れてないという奇妙なギャップに他人の店ながら「これはまずい」と気になって仕方がありませんでした。

日本人のもてなしや企業の顧客サービスはお客様が喜んでくれるプラスサイドに働いている場合は問題ありません。ですが、いざ、失敗などが原因でマイナスサイドに陥るとお客様はとことん会社を責め、会社としては「クレーマー処理班」がその対応に追われたりするわけです。

となると日本人のもてなしはポジティブの時はより強くその効果が出る一方、マイナスとなったときは防戦一方に
なる弱さがあるともいえます。一方、カナダのサービスは防戦に強い気がします。私もサービスの悪さにかなり強くクレームすることがありますが、カナダ企業のうまさというのは「あなたのその問題を解決する為に私は最大限の努力をしています」ということが無機質なマニュアル文書ややり取りではなく、その人の気持ちや態度がが分かるような形で対応してくれることに最後は「分かった」と言わせるうまさがあります。

日本のもてなしを海外に輸出するならばその部分を強化する必要があるかもしれません。ですが、基本的には日本人は世界最高水準のサービス精神を持っている事にはかわりありません。サービスビジネスをもう少し国際スタンダードに引き上げれば素晴らしいもてなしビジネスが海外に輸出できると思っています。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年9月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。