日経の電子版に興味を引く記事が出ています。「中国株騒動、米投資家の嘆きと教訓」。アメリカで上場する中国関係の企業の株価が冴えず、また、企業のディスクロージャーが十分でなかったり、相次ぐ不正で上場が危ぶまれるところもあり、それら企業に投資しているアメリカ人も勉強させられているという内容です。
企業ディスクロージャーや不正問題を語るとき、欧米とアジア諸国の温度差を最も感じるケースの一つではないでしょうか?それは欧米に比べてアジア諸国が袖の下、賄賂、特別なアレンジ、配慮などをビジネスの常としているところにあります。これは中国に限らず、韓国も日本もそうであります。理由は上を敬うという儒教の精神が根本にあるのではないかと思います。
この場合の「上」は年齢に限らず、顧客、世話になった人、人生の先輩など様々なケースが想定されます。
私が昔、カナダのホテルで日系アカウントの面倒を見ていた際、日本人顧客からは考えられないようなリクエストが多数寄せられました。もともと私の仕事ではなかったのですがホテルの担当部門が日本人顧客のリクエストを理解し、全うに対応できる人がギブアップしたため、私が間を取り持つことになったのです。部屋はアップグレード、眺めは最高の部屋で、差し入れをホテルから入れさせて、チェックインせずにホテルの責任者が車寄せでカギを持って到着を待ち、部屋まで案内せよ、そして宿泊代はレギュラールームより安くせよ、といった内容です。
何故、こんなリクエストがあるかといえば現地担当者の「面子」と「能力の誇示」であります。最高の接待をホテル側にやらせれば「お前は頑張っているな」と顧客、本社からの来訪者に褒められるわけです。
当然ながらこんなビジネスは成り立ちません。ホテルは日本向けのビジネスを極力絞りました。当時の総支配人が面白いことを言っていました。「利益率が悪く、手間のかかる日本人よりアメリカ人や欧州の『サービスの価値が分かり、お金を払ってくれる顧客にシフトせよ』」と。ビジネスとして大正解だったと思います。
日、韓、中。この三国でみれば日本が欧米化には一歩先んじているとは思います。それでも日本在住の日本人は20年前となんら変わらない「こてこての状況」に変わりがない人がほとんどではないでしょうか?ましてや中国となるとまさに如何に人を踏み台にして上がるか、そして自己利益の追求という点では日本よりはるかに強いものがあるかと思います。
欧米にも不正は当然存在します。事実、大きな事件も過去、何度も起きています。しかし、それらの事件とアジアの不正では性格が違うもののように思えます。それは確信犯と「ビジネス上避けられない流れ」いう違いといえばよいのでしょうか?
中国ビジネスの苦悩は欧米資本の取り込み、そしてさまざまな協力を仰ぐに当たり欧米ビジネスの期待通りにことを運べるのだろうか、ということが数ある問題点の一つとして上がってくることになるかと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年9月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。