中国レアアース取引規制の失態 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

中国のレアアース(希土類)最大手、内蒙古包鋼稀土高科技が出荷を停止したと日経が報じておりました。日本のテレビニュースでもカバーしていました。レアアースといえば昨年、日中関係が悪くなった際、中国側が報復でレアアースの出荷を政治的に抑え込み日本のハイテク産業にダメージを与えようとしたものです。

ところが日本企業は必死で代替品や効率の向上を図ると共に市場価格が急騰したため、世界のあちらこちらでレアアースの再開発がスタートしました。結果として市場価格はモノによってはピークから7割も安くなるなど市場原理が完全に歪められ、最大手の企業ですら出荷停止という事態になった模様です。


当時中国政府はレアアースはレアな資源だから大事に使うためにも輸出制限をすると述べたのに対して実際には裏取引で相当流れたとも言われています。テレビでそのシーンを映しているものもありました。それは政府が政策的に輸出を抑えることで市場価格は上昇し、一方で儲けたいと思う関係者は高値で裏取引に応じるという構図でしょう。

中国は本気で輸出制限をするのであれば完全なる対策を打つべきでした。ところが誤算は流出。更に日本が余りにも速いスピードで代替品を確保したり開発したことがあると思います。

ダイヤモンドや金の採掘現場では現地労働者がダイヤや金をくすねないよう、大変なセキュリティをかけるとされています。私が勤めていた建設会社がブラジルで金の採掘をしていた頃、アマゾンの奥地だから誰も持ち逃げできない状態になっていても身体検査などあらゆる対策をとったと聞いたことがあります。しかしジャングルの中で働くツワモノ、それならと事務所を襲撃を企てられたこともあるとか。

結局中国におけるレアアースはダイヤや金と同じような価値を持っていたわけですから裏で流せればいくらでも懐が暖まる仕組みが存在していたということになります。

結局この事件、誰に落ち度があったかといえば中国政府以外の何者でもありません。WHOにまで提訴され、市場価格のコントロールにも失敗しました。

ところでアメリカのニュースに中国の統計はまったく信用ならないという記事が出ていました。GDPの伸びに対して電気の消費量が合わないなどさまざまな統計を組み合わせると矛盾が生じ、著者は実質的にはほとんど成長していないのではないか、と指摘していました。

国土が広く、13億の民を抱え、民族問題もあり、共産党内の派閥問題もある中で全国土を統一し、共産党体制で縛り込むのは骨が折れると思います。その中で指示系統は横との関係が薄くなり決められた指示に従うという組織の硬直化が起きているような気がいたします。これは国家が成長するにおいて軋轢やゆがみが生じやすくなるものです。

習近平国家主席の体制になった時点で内需刺激を含めた大掛かりな政策を発表するのではないかと噂されています。事実、現体制下ではリーマンショック後に行われたような大規模な対策はもうやらないと断言しております。内需刺激も重要ですが、中国が国家として成長し続けるためには連邦制等通じた権限委譲と大胆な組織改変をもって対応しないと東南アジア等の新新興国に追いつかれて、追い越される可能性は大いにあると思います。

新体制の展開に期待したいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年10月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。