New York TimesにNate Silverによる大統領選挙世論調査結果の総括が公表されている。世論調査大手のギャラップは、2008年、2010年に続いて大失敗だったそうだ。今回も、平均誤差と共和党への傾き過ぎ度が共に7.2%で、最悪と評価されている。
ギャラップが電話インタビューを用いるのに対して、ネット調査Google Consumer Surveysは第2位の成績で、平均誤差は1.6%と小さく、共和党への傾き過ぎ度も1.0%だったという。Google Consumer Surveysは、プレミアムコンテンツを誘いにして、消費者にアンケートを実施するもので、普段はマーケティングツールとして利用されている。
翻って、わが国の世論調査は相変わらず電話インタビュー方式である。「野田内閣の不支持率、過去最高64%」と伝える朝日新聞は、無作為抽出した3128世帯から1611人の有効回答を得たそうだが、果たしてそれで世論を把握できているのだろうか。記事に「世帯用と判明した番号」という表現があるところを見ると、固定回線に電話しているようだが、手法として古すぎないか。
事情は10月29日に発表された日本経済新聞の世論調査でも同じ。有権者のいる1457世帯から931件の回答を得ただけなのだ。
一方で、8月28日付の日本経済新聞には、世論調査では原子力発電所への否定的な意見が強かったが、政府が127万人規模で実施したネット調査で10代、20代の多くが「原発維持」との結果が出た、という記事が出ていた。
メディアはもっとネットを上手に利用すべきだ。間もなく総選挙が行われるこの機会に、世論調査手法を見直すべきだ。メディアと政治家がネット嫌いというのが、わが国の課題である。総選挙を前に衆院の「一票の格差」は最低限度是正されるそうだが、ネット選挙について見通しがつかないのは、嘆かわしい事態だ。
山田肇 -東洋大学経済学部-