電波に経済的価値を反映させる新しい方法(勉強会のご案内)

山田 肇

スマートフォンの普及に伴い電波はますますひっ迫している。そこで、電波利用に経済的価値を反映させて有効利用を促進すべきだ、と多くの専門家が主張してきた。経済的価値を反映させる方法としてオークションが、アメリカでは1990年代から、ヨーロッパでは2000年前後に導入された。電波オークションを実施していない主要国は、今では日本と中国だけである。

オークション制度の最大の問題点は、オークションが始まらないと経済的価値が定まらないことだ。すでに利用されている帯域の潜在的価値を知るのには、オークションは役立たない。

一方に、電波利用料という制度がある。これは総務省が無線局の免許人から徴収する料金のことだが、なぜ携帯電話一台につき年200円で、10kW以上のテレビ送信局は年3.5億円なのか、といった疑問に答える料金体系にはなっていなかった。


電波利用に経済的価値を反映させる方法について長年研究してきた鬼木甫氏が、画期的なアイデアを思い付き、InfoCom REVIEWに論文を発表された。

免許人は退出を求められた際に要求したい補償額をあらかじめ宣言し、その額に比例して毎年電波利用料を支払うというのが、新しい仕組みのポイントである。法外な補償を要求すれば電波利用料の負担が増す一方、電波利用料の支払い額を抑えようとすると本当に退出を求められる恐れがあるため、宣言する補償額は電波の経済的価値を反映する可能性が高い。また、次の免許人には、購入に必要な額があらかじめわかるという利点もあり、オークションよりも日本になじむ制度かもしれない。また、すべての帯域について経済的な価値を露わにすることで、電波の再編成が進む可能性がある。

情報通信政策フォーラム(ICPF)では鬼木氏にお越しいただき、2月5日午後、勉強会を開くことにした。講演で使用する「概要」と「図表」もICPFサイトから閲覧可能にした。どうぞ、ふるってご参加ください。

山田 肇 -東洋大学経済学部-