マイクロソフトのオフィスパッケージといえばエクセルやワード、パワーポイントなどがついたパソコンを動かすツールとして今でも高い人気を誇っています。このオフィスパッケージ、今までは購入して自分のパソコンに取り込むのが普通でしたが、遂にクラウドによる「貸し出し」政策に転換するとのことです。勿論、販売も継続するようですが、この「貸し出し」に一歩踏み出したマイクロソフトの戦略は世界が今、向かっている方向をきちんと見据えているといっても良いのではないでしょうか?
なぜ、所有ではなく、借りるのか、ということを考えた時、日本人はまだ強い所有意識があるのですが、借りた方がメリットがあることは多いのです。そして、我々は知らぬ間にその方向に向かっているのです。
借りるメリットをいくつか書き出しましょう。
一時期に多額のお金を必要としません。上述のオフィスなら5人まで使えるものが年100ドルです。つまり、一人20ドルならホーム&ビジネスパッケージを220ドルで購入する11分の1で済みます。
次に最新のものにアップデートしてくれる手間が省けます。所有するなら自分で随時アップデートしなければなりません。つまり、管理が楽なのです。
更にどこでも使える、というのは便利です。私のように日本とバンクーバーを行き来するのにいちいちパソコンを持たずにそこにあるパソコンを使うという選択肢ができます。
実は所有することが面倒である、と考える人間の行動はあちらこちらで見受けられます。たとえば、不動産。なぜ、マンションに住むのか、といえば管理が楽なのです。雨漏りしても落書きされてもペンキの塗り替えも「管理組合」がやってくれるのです。自分は自分の部屋だけ、面倒をみるというスタイルです。
香港のマンションは台所が極めて狭いのですが、もともとの理由は不動産が高いということなのですが、実質的には家で作るより外で食べた方が安くてうまい、ということです。これは台所と台所用品を所有するより外食することでサービスを受ける方が楽である、と考えられます。
以前、このブログでアセットライトということを何度か書かせていただきました。所有するより借りる時代になる、と。これはビジネスのことを中心に述べたのですが、バランスシートで資産をしこたま持つより損益計算書でコストとして認識できる方が良い、と考えるひとつの理由は時代の進歩があまりに早くなったため、資産所有してもその資産を効率的に活用できないということがあるのです。
不動産の話ばかりで恐縮ですが、私は日本では借地権の不動産は絶対にねらい目だと思ってます。権利が30~40年ぐらいあれば建物なんて償却できるのですから安い賃料で借りられる借地権は日本の不動産で最大の目玉商品だと気がついている人はまだまだ少ないようです。要は日本人は所有するという大前提からまだ変えられていないということなのだろうと思います。
これを意識的に変えてみると世の中も生活観もまったく違ったピクチャーが描けると思います。シェアハウスにカーシェアリングはまさにその一例です。これからの時代はこの方向になろうとしているのはほぼ間違いないと確信しています。5年か、10年たって、私のブログがなるほど、と思われるかもしれませんね。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年2月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。