のつづき。
ブラック企業に入って「やらされていると思わない」というのは一種のマインドコントロールでしょう。では、 「大企業に入って安定することが一番」ということも、マインドコントロールを受けた結果ではないのか、というお話です。
■「恋愛至上主義」はマインドコントロールでないか?
日本には、家督という制度がありました。大日本帝国憲法にも残っていますので、鎌倉以来、数百年の長きに亘り維持されて来た制度です。制度ができるにあたって、まず、そういう文化があったのでしょう。
家督制度を変えても文化は簡単になくなりませんから、21世紀の今でも「選択的夫婦別姓制度」の議論がかまびすしいし、いろんな問題を生んでいます。
恋愛至上主義になってしまった中、日本で唯一、合法的な家督制度が残っていると言える天皇家では、(特に男子は)恋愛至上主義とはなれない事情がありますから、結婚には大変なハンデがあります。そのため皇太子殿下がご結婚に苦労されたことは記憶に新しい。最終的に恋愛結婚になったようで、とてもよい結果にはなりましたが、唯一、合法的な家督制度が残っているところへ入ることになる、雅子妃殿下のご決断は並々ならぬものがあったでしょう。皇太子殿下のご苦労は常人には計り知れませんが、雅子妃殿下やご家族の苦悩も大変なものだったと想像します。
天皇家ほど特殊でなくても、現代日本では、家督制度があった頃なら選び放題の名家に生まれても簡単に結婚できなくなっています。例えば、大臣経験者のご子息で、曾祖父と伯父が総理大臣経験者という名家に生まれても、簡単には結婚できない恋愛弱者のようで、バラエティ番組でモテないキャラクターで売り出されている方もいる。
恋愛至上主義になったお陰で、「恋愛弱者はなかなか結婚できない」という問題も起きている訳です。
恋愛至上主義が絶対的に正しければ、鎌倉時代から終戦までの数百年に生きてきた人々は、ほぼ全員が不幸ということになりますが、そんなことはありませんし、(恋愛至上主義)自由恋愛が可能な現代が幸せかというと……。幸せですか?
家督制度の「全ては家のために」というのは、現代の価値感ではそうマインドコントロールされていたと言えますが、「恋愛至上主義」はマインドコントロールでないと言い切れますか?
■大企業が正しいと感じるのはマインドコントロールではないか?
大企業のメリットというのは、終身雇用や年功序列に根ざしている。
1980代後半から、日本は「Japan as No.1」と言われ、終身雇用や年功序列という日本の制度を研究した海外の方も多いですが、実際に海外ではほとんどなく、終身雇用や年功序列は、日本固有の制度ではないかと考えています。
しかし、終身雇用が崩れれば、能力と報酬が見合わなくなれば解雇されますし、年功序列が崩れれば実力主義になり、成果報酬や裁量労働制の「今の基準で言えばブラックな仕事」になります。成果報酬でも、裁量労働制でもない仕事は、非正規や海外に流れるでしょう。
もう、終身雇用や年功序列は、どんな大企業も維持しきれなくなってきているのは事実ですから、今後は、ブラック企業か非正規の二極化が進むのは避けられない訳です。
しかし、その制度から生まれた文化は、まだ、脈々と生きています。ですからこそ、新卒一括採用が当たり前で、1年以上前から「就活」を行う。それに敗れたら「自殺する人が出る」などという悲劇は1件や2件では済まず、多すぎていちいち報道されないほど起きてます。
それはマインドコントロールされた結果ではないのでしょうか?
■Stay hungry,Stay foolish!
私は基本的にデザインを解さない人間なのでApple製品は「ただ高い」と感じてきた。Steven Jobs氏のデザイン重視の考え方は、顧客としての私にはあまり合いません。
しかし、Jobs氏と比べれば砂粒のような存在でも、本質的な部分では共感できる。
Jobs氏が亡くなった当時に書いた日記を少し引用。
ジョブズ氏の死を悼むことは結構なことです。しかし、ジョブズ氏は本当にアップルストアに花を手向け、すぐさまiPhone4Sを予約する「善良な消費者」を求めていたのでしょうか?
死亡届に人生最後のタイトルとして「起業家」と書く人の想い(もちろん、ご家族が書いたのでしょうけど)が、そんなに軽いとは思えない。
私は会ったこともないし、特に思い入れもないけれど「どんなに小さくても私も闘うよ」と思うことが、最も「ジョブズ氏の死を悼む」ことになるだろうと考えています。元々そうやってきたし、これからもそう考えている。
私のことを言いたいわけではない。何か志を持って起業した人達。日本の中小企業の社長のほとんどは、ジョブズ氏に負けない拘りを持って常識と闘っている。常識通りみんなに合わせて勝てるほど甘い世界ではないから。
しかし、「闘う君の唄を、闘わない奴らが笑うだろう」
闘わない奴らは、花を手向け悲しんでいるけれど、次の瞬間に、闘う人を笑う。
悲しんでいるのも、『みんな』に合わせているんじゃないのか。『みんな』の評価がなければ悲しむことも、讃えることもできないんじゃないか、とさえ思う。
スティーブ・ジョブズ氏について - SQLer 生島勘富 のブログ誠に残念なことにスティーブ・ジョブズ氏が亡くなってしまった。ご冥福をお祈りいたします。 私はスティーブ・ジョブズ氏にそれほどの思い入れもない。ですから、思い入れのある人達が語れば良いだろうと考えていました。その功績は間違いなく立派で賞賛に値する。ですから、みんなが賞賛すること、死を悼むことは決して間違いではないと思う。...
日本中に悲しむ人があんなにいたのに、やっぱり次の瞬間には闘う人を笑っている。大企業に入ろうと就活に必死な人の中に、すぐさまiPhone4Sを予約したような「善良な消費者」が大勢いる、というのは偏見ではないでしょう。
Appleファンはよく信者と言われますが、製品にマインドコントロールされた信者であって、Jobs氏の本質的なマインドコントロールは届かなかった。ほとんどの人は、本質にはたどり着けず、Jobs氏の死をいたずらに消費しただけではないか……。
■マインドコントロールされるのは仕方ない
「大企業に入って安定したい」
「恋愛禁止のアイドル」
「何があっても國軆護持」
「お家が何より大事」
「共産主義」
「Stay hungry,Stay foolish!」
「社会主義」
「恋愛至上主義」
「あらゆる宗教」
「ベンチャーの根性論」etc
軽重はあっても、すべてマインドコントロールですよ。
人間は、本能のままに生きれば動物と同じで、何かに影響を受けないなんてことはあり得ない。誰もが、多少なりともマインドコントロールされているんです。
そんな中で、重要なことは「一つの思想に支配されすぎない」ことではないでしょうか。
「大企業に入って安定したい」と考えるのは、「Stay hungry,Stay foolish!」とは真逆の考え方です。そんな考え方で大企業に入り、大企業の文化が全てになってしまってから追い出し部屋に入れられるようなことになれば、全く潰しが効きません。
しかし、一つの思想に支配されすぎないように注意していれば、大企業に入ってから「Stay hungry,Stay foolish!」を実践しても良い。(全然、foolishじゃない小賢しいやり方ですが……)
「大企業に入って安定したい」と考えていたけれど入れなかったとしたら、ベンチャー系ブラック企業に入ったって良い。根性論に染まったりそこで倒れたら大変ですが、根性論の先にある合理性を見極めて、「やらされている」と思わなければ人は簡単には壊れない。
大企業に入って大企業に染まることも危険ですし、ベンチャー系ブラック企業に入って根性論に染まることも危険です。ですから、あなたなりの人生の戦略を立てて闘ってください。
あなたが、人とは違うチャレンジをすれば、「闘わない奴らは笑う」でしょう。しかし、笑われてもいいじゃないですか。「闘わない奴ら」にナンボほどの価値もないのですから。
株式会社ジーワンシステム
生島 勘富
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