以前のアゴラエントリー、ユニクロの未来を予想してみるに対して、アゴラのコメント欄のみならず、直接のメールも含め幾つかの質問を頂戴した。
大別すると先ずは、ユニクロのビジネスモデルは生産から販売まで一気通貫の垂直モデルでありECとはとの競合はないはず?というもの。
今一つは、ECでアマゾン、楽天との競合は理解出来るがドコモはキャリアーに過ぎず過大評価では?という疑問であった。
前者については、アゴラに寄せられた漆山智之氏のコメントが判り易いのでこれを参照する。
ユニクロの未来とECサイトの隆盛がどのように結びつくのでしょうか。amazonをはじめとするECサイトによって危機に立たされるのは純粋な流通業であり、ユニクロのように製造に携わる企業への影響は限定的でしょう。ユニクロの製品がamazonに流れて、ユニクロの実店舗との価格競争に陥るということが有り得ないからです。
確かにビジネスモデルのみで考えればこの指摘は正しい。しかしながら、一般顧客が「ユニクロ」ブランドに価値を置いて商品を購入しているとはとても思えない。商品の価値や機能と値札にプリントされた価格を天秤にかけた上で購入している訳である。
従って、他ブランドであっても商品の価値や機能が同じで、店舗の販間費がかからぬ分、例えば二割、三割安ければ顧客はそちらに流れるというのが私の予測である。
一方、ドコモはECという事業領域で成功出来るのか?については極めて有望と感じている。その理由を書き出してみると下記の通りとなる。
矢張り第一に「ドコモ」というブランドイメージから来る安心感が大きい。これは、消費者が安心して購入出来る事を意味する。
第二は、ドコモが既に6,000万を超える既存ユーザーの銀行口座から電話やインターネット利用料金を毎月引き落としている事である。
この国内最大と思われる課金プラットホームとユーザーの住所を含めた個人情報をデーターとして所有しているのが大きい。追加の顧客管理コストは微々たるもので、通販サイトを構築すれば配送から課金までをドコモで一気通貫に提供することが可能となる。
銀行口座からの引き落としにが、EC各社が採用しているクレジットカード決済より優れているのは明らかである。
後二週間もすれば地方から多くの大学生が新入生として上京して来る。収入のない大学生がクレジットカードを所有する事は難しく、結果、通常のECは使い勝手が悪いと思う。
一方、ドコモであれば銀行口座引き落としであるから何ら問題ない。
従ってドコモの取り扱い商品が充実して来れば、大学入学を機にドコモECサービスの顧客となり、その後社会人となっても使い続けるという展開を予想するのである。
正に独占による利益を濡れ手に粟で獲得する訳である。
最後は、ドコモの資金力である。ドコモのECサービスが成功するためには矢張り品揃えを充実せねばならない。
ドコモのAmazon化は本気!? 大手アパレル通販サイトを買収に、が示す通り潤沢な資金力を背景に、今後通販サイトの買収を加速させるはずである。
その結果、日本のEC市場においては従来の、アマゾンvs楽天の競合に加えドコモの加入という展開になる。
そして、生き残りを目指し、「知恵比べ」、「アイディア勝負」、「スピード競争」が加速し、使い易いサービスと低価格が極限まで追求される結果になる。消費者に取って福音である事は確かであろう。
一方、ユニクロを含めたリアル店舗を展開する各企業の経営者は眠れぬ夜を過ごす事となる。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役