2013年の税制改正により、2013年4月1日から孫への教育に関する贈与税が一人あたり1500万円まで非課税になる。金融資産の高齢者への偏在が問題となる中で、次世代への積極的な投資に結びつく有効な政策と評価したい。また政府が政策方針を発表後、学習塾の株価が上昇したり、信託各社が「教育資金贈与信託」の4月からの発売をあいついで決定したりするなど、市場の反応も上々である。
私は、今回の新しい取り組みがより、次世代の教育にとって役立つものとなるには、文部科学大臣が決定する「教育費」の範囲がどこまで適用されるのかということが重要であると考えている。なぜなら、近年のIT技術の発達やグローバル化によりもたらされた新しい形の教育が、今回の「教育費」の範囲に含まれるのであれば、若い世代がより次世代に必要な教育を受けることができるようになるからである。逆に、既存の教育のみを「教育費」の範疇とするのであれば、今回の取り組みの効果は半減することになると危惧している。
以下、英語教育を想定して具体的に説明をする。耳にたこができるほど誰もが理解している事実として、日本人が英語力を高めることはますます重要となっている。この英語学習の分野においても、近年IT化とグローバル化の恩恵により新しい形の教育が数多く登場している。近年誕生した中で、私が最もインパクトのある英語学習と考えているのが、オンライン英会話とフィリピン留学である。
オンライン英会話とは無料インターネット電話Skypeを利用し、海外から直接日本につなぐことで従来の英会話比べて格安で英会話授業を提供するサービスである。主要サービスの多くは、フィリピン人講師を採用し、月額5000円程度で毎日英会話レッスンを提供している。一昔前に流行った駅前留学が数十万円したことを考えれば、驚くべき進化である。
次にフィリピン留学であるが、こちらは英語学習大国である韓国で10年ほど前から有名なサービスである。韓国では約年間12万人がフィリピンに留学しており、フィリピン留学が韓国の英語力の向上に果たす役割は大きい。
フィリピン留学の人気の秘訣は、マンツーマンレッスン、宿泊費、食費込みで月額10万円程度で英語留学ができるという点である。欧米留学の3分の1程度の費用で留学が可能であり、従来の留学という概念を覆す新しい学習の形だと言えるだろう。
私は、一英語指導者として、オンライン英会話とフィリピン留学が今回の「教育費」に認められるよう非常に期待している。仮に大学生が学生時代にオンライン英会話を4年間、1ヶ月のフィリピン留学を3回行った場合、想定される費用は60万円?80万円程度である。この程度の金額であれば、今回の政策により贈与を受けることになった人たちの多くが、支払うことが可能な金額である。
また、これだけの英語学習の時間を確保できるのであれば、韓国のようにTOEICでいえば800点を超える成績をとる者の数も激増するだろう。文部科学大臣には、是非このような新しい教育に対する寛容な姿勢を示していただきたい。
一方で、フィリピン英会話業者の努力も必要であろう。実際に、フィリピン英会話業界は新しい業界ということもあり、玉石混合である。フィリピンでは語学学校を設立する際に、公的機関であるTESDAという機関から認可を取得する必要があるが、実際に多くのオンライン英会話、フィリピン留学学校が無許可のまま事業を運営していると報告されている。フィリピン英会話業者にも日本でのオンライン英会話、フィリピン留学の信頼が高まるよう努力していくことが求められている。
フィリピン留学 サウスピーク代表
柴田 浩幸