スーパードメスティックのススメ!

田村 耕太郎

今回は”スーパードメスティックのススメ”を説きたい。拡大する国外の機会を目指して、英語を身につけ世界に飛び出す人に増えてほしい。そういう人に世界の舞台で活躍して力をつけてもらい、できたらいつか日本に帰ってきてその力を日本社会に還元してほしい。ただ、「日本にいて日本を極める」という選択肢もあると思う。


国を挙げて英語教育やグローバル化に取り組むシンガポールや韓国と違い、我が国には皆が英語を勉強して皆が世界を目指す必要はないと思う。日本経済はそれらの国家と比して巨大で、産業のすそ野も広く、強靭だ。国内に多くのチャンスが眠っているのだ。その宝の山を掘るためには、日本にいて純日本市場に徹して適応する手もあるのだ。

中国や韓国、シンガポールの若者が、昔の日本さながらの受験戦争を勝ち抜いて徹底的に英語を手に入れようとしている。ガッツに溢れている。それを見て危機感を持つ識者や経営者が多い。「日本も詰め込みに戻せ」「徴兵制をやるべきだ」との意見も出る。気持ちはわからないでもない。彼らと触れ合うと、危機感から日本人も鍛えなおさねばと思うこともある。ただ、「新興国の人たちと同じ土俵で勝負してどうする?」とも思う。

しかし、彼らのような「切迫感」に由来するガッツを、豊かに育った日本人が、今更、身につけてもらうのは難しいだろう。もちろん、彼らと同じ土俵で戦える闘争心と競争心を持った日本人もいるので、そういう人には是非とも競い合って成長してほしい。だが、彼らと同じ土俵で戦っても返り討ちに合うのがオチだろう。彼らと戦わないという「戦略」も重要だ。

内需がなく世界の舞台で戦わざるを得ない新興国と違い、日本には莫大な内需がある。そしてその内需は99%以上が日本人という特異な構成になっている。確かに高齢化で日本の人口は減り、市場は縮小していく。しかし、日本の人口減少のペースは年率で0.5%程度というゆっくりしたものだ。逆に医療や食事の進化でさらに寿命が延びていけば、人口減少率は下がるかもしれない。これくらいのゆっくりしたスピードなら、十分対応していけると思う。

日本の高齢者は国民全体の7割近い金融資産と不動産を持っている。この層が欲しがる商品やサービスを開発し提供することに徹してみてはどうか?高齢者もひとくくりにできない。まらこれから高齢者というカテゴリーに入ってくる世代は、今の高齢者とは全く違った消費傾向と嗜好を持つ。 ここは本当に有望な市場だ。日本人の感性に近いし、豊かに育った日本人でないとなかなかできない挑戦だと思う。新興国の若い世代がいくらガッツがあっても、日本市場や日本の社会や文化や気質を理解せずにこの市場を狙うことはできないだろう。

苦手な英語を学んだり、海外に関心もないのに飛び出したりする必要はない。自分の適性でないと思うなら、そんな時間は日本人の高齢者を理解することに徹底して投入する方がいいのではないか?英語より敬語を学び、海外に出るより高齢化の進む地方都市に行き、そこでの高齢者の暮らしぶりや解決すべき課題を多く見てくることの方が意義がある。

海外を目指し、ガッツの塊の新興国の連中と戦わないのなら、日本に徹しよう。何事も中途半端が一番よくない。地方都市の高齢者と一緒にこれからの日本の在り方を探っていけるくらい信頼される純日本人に徹し、その視点でこれから必要となってく商品やサービスを考え出すのだ。

日本語も、日本文化も、日本の歴史も、地方都市の慣習も理解し、習得を目指そう。「世界」が嫌なら、自分に向かないと思うなら、徹底して日本を掘り下げよう! スーパードメスティックも徹すればたいした武器だ。次回以降具体的に何をすべきか拙案を紹介していく。

この記事は私のブログからの転載です。