アップルの決算からみるアメリカ型経営への疑問 --- 岡本 裕明

アゴラ

注目されていたアップル社の1月~3月の決算が発表されました。結論的には増収減益、増配と自社株買いで株価は下落を免れたということでしょうか。決算発表後の株価は比較的落ち着いていたと思います。というのも決算発表前から数字が悪ければ株価下落防止策を打ちだすだろうとは言われていました。つまり、経営陣には株主から一定のプレッシャーがあったのでしょう。


ですが、アメリカの主要たるファンドや機関投資家が大きなポーションを組み込んでいるアップル社の株価の下落はその影響が果てしなく広がるという意味でもあり、経営陣が株価防衛に走らなくてはいけなかったともいえましょう。これはとりもなおさずアップルの株価は本業で支えきれず、財務的手法により維持しているということであり、本来の健全な意味での株価ではないということでもあります。

昨年9月につけた700ドルという高値から40%以上下落した株価の説明はこの6ヶ月間に出たさまざまな悪いニュースの結果であります。古いモデルが売れてiPhone5の売れ行きが芳しくない、市場シェアは下がる、市場開拓者から市場フォロワーになった、などなどはその一例でしょう。挙句の果てに中国ではiPhoneの修理に関して国営メディアからもたたかれ、謝罪までさせられました。ティムクックCEOの苦悩は手に取るようにわかります。

一方、クック氏は “I don’t want to be more specific, but I’m just saying we’ve got some really great stuff coming in the fall and all across 2014.”(詳細は語れないけれど、今年の秋にはすごいものを用意しているよ)という言葉にどこまで期待を弾ませるべきなのか悩ましいところであります。多分それはアップルテレビか噂されている腕時計型の新型ガジェットのなのかもしれませんが、市場がそれにどこまで反応するかは蓋を開けてみないことにはなんともいえません。

スマホそのものがもはやコモディティとなった今、アップル社のiPhoneやiPadは安定したシェアと収益を確保するベース商品以外の何者でもありません。同社が、そしてスティーブジョブズ氏が作り出したものはSomething Newであり、市場が熱狂するものでした。それはこだわりでもあり、天才的なセンスとそれに洗脳された頭脳集団が具現化したからこそ成り立つものでした。つまり、カリスマ性です。

アメリカの特徴にヒーロー、ヒロインを作り出し、そこに圧倒的な注目とパワーが集中することで一定の連帯感を持ち続けているように見えます。それは社会、政治、文化、そして経済に於いて感じます。ただ、人のピークは長く続かないがゆえに例えばビジネスの場合、企業の成長性、持続性に限界がでて、弱くなったところでM&Aという形で別のヒーロー達が王者となることを繰り返しているようにみえます(もちろん、集団マネージメント体制をとっているところもたくさんありますが)。

これがアメリカ経営の流れだとすればトヨタのように集団マネージメントのスタイルが今後、改めて見直されることは大いにありえるのかもしれません。経営スタイルも流行があるのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年4月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。