「育児休業3年延長」が政策として全然意味がないワケ --- 城 繁幸

アゴラ

安倍総理が、今度は育児休業を3年に延長するよう経済界に要請した。少子化対策と女性の社会進出を狙いつつ、ついでに待機児童問題も解消してしまおうという趣旨らしい。

女性の社会進出が成長戦略の柱だという点でまったく異論はないが、正直言って筆者には意味がよくわからない。


現在の公務員方式(つまり、原則、最初の一年は賃金の一部が給付金として支払われ、あとの2年は無給だが復職できる権利をキープできる)を民間にも適用するとした場合。

そもそも多くの家庭では専業主婦をやる余裕がないから働きたいというニーズがあるのであって、「無給で2年間家にいてもいいですよ」と言われたからといって「はいそうですか」と家にいる人は多くはないだろう。

実際、筆者の知る限りでも、1年以上の育休を取得している公務員はほとんど聞かない。要するに、この場合、政策としてはほとんど意味がないということになる。

仮に、追加の2年間も誰かが何らかの給付を行うという場合。その場合、確かに「じゃあ保育所に預けないで自分で面倒みよう」と考える家庭もあるだろう。ひょっとすると待機児童問題も解消するかもしれない。

ただ、その場合、Maxで3年も休ませなければならない企業は、女性の採用数を絞るか、結婚や妊娠を機に女性の肩を叩いて辞めさせることになるだろう。そもそもの政策の目的である「女性の活躍できる社会の実現」からは、むしろ後退することになるはずだ。

というわけで、安倍さんは一生懸命バットを振ろうとしているのだけど、単なる空ぶりに終わるか、当たったら当たったで凄い自打球になりそうな予感がしている。

ちなみに筆者の意見は、問題の本質は育休期間の長さではなく、ひと段落した後に(職場復帰にせよ再就職にせよ)キャリアのメインストリームに戻りづらい雇用慣行にこそあるというものだ。

だから、変な球には手を出さず、ここは労働市場の流動化一本に絞ることをおススメしておきたい。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2013年4月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。