なぜ、サンリオの「キティ」は仕事を選ばないのか? --- 内藤 忍

アゴラ

毎週購読している日経ビジネスの最新号(2013.5.20.号)にサンリオが取り上げられています。サンリオと言えば、キャラクター「キティ」が有名ですが、このキャラクターと使ったビジネスが劇的に変化し、同社は営業利益のV字回復を成し遂げているというのです。


変化のポイントは直販モデルから、ライセンスビジネスへの転換です。

創業社長の長男辻邦彦副社長から声をかけられた、三菱商事出身の鳩山玲人氏がサンリオに入社。「オープンイノベーション」の精神で他社へのライセンス供与に乗り出します。

キャラクターはディズニーに代表されるように、デザイン変更などを制限し、イメージを慎重にコントロールするのがセオリー。ところがキティは「かわいい、仲良く、助け合い」という精神にのっとっていれば自由に変えられるようになっています。

例えばフコク生命のキャンペーンにはOLになった人型のキティが登場したり、ゲームとのコラボでナメコの形になったりと、かなり大胆です。ライセンスを供与された側が自由に調理できるというのは、従来には考えられなかった発想です。

業績はキャラクターのライセンス供与で最高益に迫り、経営も実質無借金という優良企業になったサンリオですが、このようなキャラクタービジネスは永続するのでしょうか?

自由にキャラクターを変えることができるというのは、フレキシビリティは高まり、提供される側からは歓迎されますが、キャラクターのクオリティコントロールに不安が残ります。

一定の範囲を超えて、キャラクターが広がりすぎてしまうと、飽きられてしまうリスクもありますし、イメージの統一感が失われてしまう可能性も出てきます。

ライセンスという言葉で思い出すのが、「フェンディの傘」です。数年前まで、日本のOLに人気のあった折り畳み傘をフェンディのライセンスで日本のメーカーが生産していたのですが、ライセンス供与が中止になって、販売も終了しました。フェンディはLVMHグループに入ってから、ブランド価値の見直しを行い、ライセンス事業によって価値が毀損しているという結論から、ビジネスの撤退を決断したと思われます。

ロイヤルコペンハーゲンのハンカチのような商品もライセンスに基づいて、日本のメーカーが生産しているのだと思いますが、ライセンス料を受け取るメリットの裏に、ブランド価値が失われていくリスクをはらんでいます。

ブランドとキャラクターは別物なのかもしれませんが、サンリオの自由なライセンス戦略が、長期的に企業価値を高めることにつながるのか。興味深く見守りたいと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年5月19日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。