日本の軽自動車規格をアジア諸国へ輸出せよ --- 岡本 裕明

アゴラ

今や軽自動車といえば日本でもっとも売れる車ベスト10では常に7割ぐらいを占め、日本にはなくてはならない車種であります。自動車各社も普通車から軽自動車へのダウンサイズをしながらその開発競争はより熾烈なものとなっています。日経新聞には日産自動車と三菱自動車が共同開発する軽自動車についてシェア二倍を目指すとあり、三菱自動車の株は素直にそれに反応し、ストップ高を付けました。


軽自動車の歴史といえば1949年に規格ができたのですが、当時はまだ価格も高く、一般庶民には高根の花でした。それが一気にブームとなったのが、1958年のスバル360だったと思います。実は私の父もそれまでのオートバイから乗り換えた初めての車でした。私も覚えていますが、いわゆるドライブが楽しくてしょうがないというのは当時を知る人には懐かしい思い出でしょう。

その後、日本では普通車が経済成長と共に自動車の主流を占め、「いつかはクラウン」のキャッチに代表されるように乗り換えるたびに大きな車になっていくのが日本全国のおとうさまにとって誇りでもありました。ゴルフ場にはマイカーのマークIIで颯爽と乗り付ける、というのはかなり自慢げな話でありました。

しかし、バブル崩壊とともに日本の自動車の主導権は軽自動車に移っていきます。そして、今、その軽自動車の技術は世界でも最高水準のものとなっています。軽の雄といえばダイハツとスズキですが、スズキは今や、リッター33キロを超える燃費を売り物としています。一方、王者ダイハツも今年の秋にはそれに対抗できる車が発売されるのではないかといわれております。

リッター33キロというのはトヨタやホンダで売り出しているハイブリッド車とほぼ同等でありながらも車体価格は100万円近く安いのであります。これはまさに驚異的な話であり、日本最大のガラパゴスであるといっても過言ではないでししょう。

軽自動車はその規格が独特であるがゆえに海外では全く見かけることがありません。特にアメリカの自動車業界は日本の軽自動車を目の敵にしており、先日のTPP参加交渉の際にもアメリカ側がもっとも難癖をつけた分野の一つであります。勝手な想像ですが、海外に軽自動車の規格がないのはアメリカが政治的にそれを抑えている可能性もあるのかな、という気がしております。

では東南アジアの道路事情と車事情を考えてみましょう。あふれる車、オートバイ、自転車が車線などお構いなしに走る姿はフィリピンでもインドネシアでも同じです。そこにはインフラが足りず、車も買えない庶民がトラックの荷台のようなところにバスとして乗合をしているその姿そのものであります。インドではタタ自動車が20万円のナノという車を開発しましたが、その後、不具合も多く、必ずしも国民の支持を受けているとは思えません。

インドにおける低価格車競争は激しく、リードするスズキも今後厳しい競争に巻き込まれるのでしょう。しかし、日本の軽自動車を東南アジア諸国に何らかの形で導入できれば、それらの国の事情にまさにフィットしたものになるはずです。

そういう意味では日本の軽自動車をガラパゴスとして留めるのではなく、どうにかして世界戦略車として工夫できればと思っています。思えば、日本のガラケーの第二世代をベースに開発したのがアップルのiPhoneでした。あの時はアメリカに美味しいところを持っていかれたわけですが、今度こそ、日本が美味しい思いをするべきだと思います。

確か、東南アジアの車の規格を統一する集まりがあるのですが、その議長は日本だったと思います。当然、その意味合いは日本車の規格を東南アジアで統一化させることにあると思いますが、軽自動車がその戦略に組み込まれれば実に素晴らしいことではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年5月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。