ハフィントン・ポストはなぜ面白くないのか そこに愛と熱はあるのか?

常見 陽平

鳴り物入りで上陸したハフィントン・ポストだが、なかなか残念な状況になっている。

ウェブ系の新しいものが出てくるたびにおこる意識高い系(笑)祭を面白がりつつ、ちょっと真面目にウェブメディアを考えてみたい。


ハフィントン・ポストが上陸して約1ヶ月。もっとも話題になったのは、六本木ヒルズでの派手なパーティーと、書いている人が一応、豪華だというくらいじゃないだろうか。

私は、とっくに読むのをやめてしまった。

卒直に、読む理由がないからだ。そこでしか得られないニュースなどなかなかないし、インターフェースも使いづらい。記事のレベルも玉石混交である。コメント欄は事前にチェックして「ポジだし」型にしているのが特徴だというが、みんなが善人ぶり売名行為をする意識高い系(笑)祭になっていて気持ち悪い。このアゴラやBLOGOSのコメント欄を激しく見直してしまった。

まあ、上陸時の盛り上がりも、ウェブ系によくありがちな、これでメディアが変わる的なものだった。ウェブ意識高い系祭だ。

昨日のやまもといちろう氏によるコメントも秀逸だった
ハフィントンポストとかほんと何だよ。朝日新聞は目を醒ませよ。
http://bit.ly/ZGZtnf

読むこともそうだが、書くこともやめてしまった。もう二度と書かないし、取材もお断りする。

このあたりのことは、次の記事に書いたのでご覧頂きたい。
ハフィントン・ポスト上陸で明らかになったプロレス団体化、ロックフェス化するネット論壇サイト(常見陽平) – Y!ニュース
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tsunemiyohei/20130518-00025029/

こんなことを書いたり、Twitterでつぶやいていたら、他の同世代の論者から「あたたかく見守ってほしい」という趣旨のメッセージをもらった。自分も大人気なかったので、これ以上、批判するつもりはない。

今日は別の切り口で考えてみよう。

卒直に、やや感情論だが、愛と熱を感じないのだ。

海外で実績があって、しかも朝日新聞がバックについていたわけだが、要するにステージを用意されたことにあぐらをかいているのではないかと感じてしまう。

ただ、運営者たちがすべってしまった。

わかりやすく言うならば、凱旋デビューの機会を与えられつつも、デビュー戦からすべったプロレスのザ・コブラのようではないか。

ウェブサイトで成功しているサイトは、運営者たちの愛と熱を感じるものである。運営者が全面に出るかどうかは別として、愛を熱を感じるのである。

たとえば、ネット上での批判を受けつつも、主張を続ける池田信夫先生と彼が主催するこのアゴラには愛と熱を感じるのである。

いま、私は仕事を受けすぎてしまい、それが納期遅れや仕事の質の低下につながっており、今後、仕事を大胆に減らすのだが、絶対に続けたいことがこのアゴラへの寄稿である。そこには愛と熱を感じるからだ。

アゴラで書いているというだけで、「お前も池田信夫派か」とか「常見は池田信夫の生まれ変わりだ(・・・殺すな)」などと言われる。別に私は池田信夫先生の意見に全面賛成ではない。だけど、人間として好きなのは、愛と熱を感じるからだ。書き手の開拓にも熱を入れていて、若手にチャンスを与えてくれている。

ハフィントン・ポストには、愛と熱がたりないのだと思う。

自分も失敗を経験している。就活の栞というサイトをやっている。卒直に、初期段階はひどかった。私自身、パワーをかけられなかったし、愛と熱がたりなかった。そのことを外部パートナーからも指摘された。彼女は去っていった。「いろんなサイトと仕事をしているが、私は、関係者がその仕事を面白がって、愛しているサイトで仕事をしたい」という言葉を残して。

胸に突き刺さった。

それから少しずつ変わった。仕事のやらされ感をなくし、面白がるようにしたのである。まあ、質の面ではいまも反省点はある。ただ、愛と熱を注ぐようにした。結果、今では特にお金をかけず、月間80万PVのサイトになった。もっとすごいサイトはたくさんあるが、就職応援サイトというカテゴリではなかなかのものだと思う。

ウェブメディアも乱立している。今後、淘汰が進むし、実際、起こっている。先日も、連載をもっている先からサイトの閉鎖を告げられた。

また、ウェブニュースの質についても、今後はますます問われるだろう。まあ、そうなると「それを選ぶのがこれからの読者だ」という話になるのだけど、人間はそうそう劇的には変われないし、それをサイトの劣化の言い訳にするのも違うと思う。

そして、今こそ必要なのは、中川淳一郎氏と梅田望夫氏によるこの状況の総括ではないか。徳力基彦氏はやまもといちろう氏とイケダハヤト師の対談を実現させた。池田信夫先生も、茂木健一郎氏と私の対談を実現してきた。私も、2人の対談が実現するよう、数年かけて取り組みたいと思った次第である。

ハフィントン・ポストはまだ始まったばかりだ。いや、始まってもいないし、終わってもいない。

今後の再浮上を期待しつつ、日本のウェブ界を激しく傍観したい。