企業も個人も如何に支払う税金を少なくするかという命題は万国共通と言っても過言ではないでしょう。私の知る限り、好き好んで税金を払う人はいません。一定のルールに従ってしょうがなく、あるいは納得し、その税額を納付しています。
アメリカの高額所得者がそうであるように、また、国境をまたぐ企業がそうであるようにいかにしてその税額を減らすかは企業の腕の見せ所であり、その後ろには税金のコンサルタント、そして、多くの場合には大手会計事務所の冠をつけてその指南をしています。
税システムが複雑になればなるほど穴はあるものでプロはその合法的抜け道を考え出し、税務当局はその穴を埋め、更にプロは別の抜け道を見つけ出し、といういたちごっこを延々と繰り返しているのであります。
カナダにおいて個人所得税の申告は全員が確定申告ですからどういう仕組みで課税され、どうやれば節税できるかは多くの納税者の間でごく普通の話題であります。企業ベースではその節税対策は更に高度なものであります。
特に国境をまたぐようなテクニックを使う場合には膨大な税務コンサルタント料が請求されるもののその効果は決して損をしないぐらいのものが期待できるはずです。これがグーグルがアイスランドとケイマン諸島の組み合わせによる節税をしたスキームであるし、アップルもスターバックスもごく当たり前のようにその対策を施していたわけです。
ところがアメリカの議会ではそれはおかしい、というボイスが上がり始めました。本来アメリカの企業であるのになぜ、税金が本国に落ちないのか、と。これに対して企業側は違法な税逃れをしたわけではないこと、アメリカの税システムが複雑になりすぎたゆえの瑕疵だった、というのが主張のようでアップルのティムクックCEOが議会に呼ばれた際にはむしろ政府側が諭された感すらありました。
しかしながら、経営側にいる私が言うのもなんですが、もしかしたらアメリカ議会でこれはおかしいとされている節税対策は本当におかしいのかもしれないという気もいたします。国際企業の納税が本国において十分に行われないことにより国家の税収は頭打ちになる公算は実に高いのです。
地球儀を見ればあちらこちらに租税回避地というがあります。また、国により定率の税率のところからアメリカや日本のように高い法人税の国もあります。水が高いところから低いところに流れるように税金もなるべく低いところに流れようとしますが、それを食い止める仕組みを作らなければ税収不足という問題は永久に解決しないことになるのです。
日本の税収がなぜ少ないか、といえばそれは企業が儲けられなかったこと、節税対策を行ったこと、個人の所得が下がったことの組み合わせに主因があるのではないでしょうか? となれば税収を上げるための対策というより、給与を増やすインセンティブ、企業が日本国内で税金を払う仕組みを作りだすしかないのでしょう。
また、捕捉という意味ではマイナンバー制度は大きな成果をあげるとみています。また、日本の税務当局は年度ごとの個人所得税は見逃す可能性があっても相続税だけは絶対に見逃さない、と揶揄されています。つまり、最後は脱税は出来ない、という意味なのですが、これをもっと制度的にすることで税務当局の目をもっと違うエリアに広げることは可能になってくるでしょう。
日本は脱税を捉まえるというスタンスも大事ですが、どうやって税を捕捉するかというアイディアの部分においてまだ弱い気がいたします。網から逃げた魚を追うばかりではなく、どうやって地引網のごとくごっそり集めるか、ということです。この辺を如何に強化するかで税収不足の何割かは解決すると思います。
税不足は国債の大量発行という不健全な国家財政を作り上げます。例えば学校教育を通して税を勉強するなど政府が税を国民に広く啓蒙するという努力も必要なのではないでしょうか?
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年7月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。