ガス料金規制の在り方を考える上では、先ずは資源エネルギー庁事務当局がガスの価格に関してどのような見方をしているかを知っておく必要がある。最新のエネルギー白書2013に、都市ガスの価格動向に関するエネ庁の認識が記されているので以下に転載する。
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○都市ガスの小売価格は、オイルショック後に急上昇しましたが、1983年度以降、低下傾向にありました。規制料金である都市ガス小口料金部門においても、1995年の制度改正後、大手事業者を中心として数度の料金改定が実施され、価格が引き下げられました。
○また、都市ガスの平均販売単価(m3当たりの販売価格)は、1995年から2004年度まで、LNG輸入価格の上昇傾向等を受けて原材料費が上昇しているものの、労務費等のコスト削減努力や大口需要家の増加等を背景に低下傾向をたどりました。その後、2005年以降、LNG輸入価格大幅の上昇の影響を吸収できず、都市ガス価格が上昇傾向に転じておりました。
○2009年には、世界的な景気後退によるLNG輸入価格の下降があり、都市ガス価格も減少傾向に転じましたが、2010年度以降は再びLNG輸入価格が上昇し、都市ガス価格もやや上昇しました。
○ガス料金を国際比較すると、小売自由化後は内外価格差が縮小していましたが、近年のシェールガスの生産増加により北米との価格差が拡大しており、我が国のガス料金は欧米先進国と比べ、家庭用、産業用ともに約1~4.6倍程度となりました。
○これは、天然ガスの輸送形態が複雑なこと(LNGで輸入後、再気化)、需要家1件当たりの使用規模が欧米の3分の1から7分の1と小さいこと、及び導管埋設の施工環境(特に市街地における工事帯延長の確保の問題、他埋設物との輻輳による導管の浅層埋設の困難等)が厳しいこと等の理由によります。
○簡易ガスの料金はオイルショック後に急上昇し(1986年426円/m3)、1987年に低下して以降(1987年372円/m3)、2004年までほぼ横這いで推移してきましたが(2004年382円/m3)、2005年以降上昇してきました(2012年3月末現在473円/m3)。
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また、昨年のエネ庁資料では以下のように、ガスの平均販売価格の推移についての現状と認識が掲載されている。これはLNG輸入価格との対比なので、ガスとは都市ガスのことであるはずだ。
更に、直近のエネ庁資料では、「ガス料金値上げの抑制を図っていく」とある。
“電力システム改革”では総括原価方式廃止・料金規制撤廃など需要家利益に反するようなことが華々しく打ち上げられているが、“ガス改革”ではそういう碌でもない話は避けて、料金規制の在り方に関する真っ当な論点提示がなされることを期待したい。『料金規制は必要である』という基本線に変更はないと思われる。規制自体は存続するが、規制内容は改正する可能性はなくはない。LNG系、LPG系それぞれの関係業界がいかにきちんとした実態把握と統計データの用意ができるかにかかっている。
編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2013年7月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。