金融資産はベータを、実物資産はアルファを狙う投資と整理する --- 内藤 忍

アゴラ

投資で収益を上げる方法は色々ありますが、その源泉が何かという分析をする場合、大きく2つに分けられます。アルファ(α)とベータ(β)です。アルファとは超過利潤のこと、そしてベータとは市場の平均値のことです。

例えば、日経平均が10%上昇した時に、自分の投資している株が15%値上がりしたとすると、15%のうち、10%は市場平均から得られたリターン(つまりベータ)であり、5%は市場より高い超過リターン(つまりアルファ)ということになります。


市場の平均はインデックスファンドを使って運用すれば誰でも得ることができますから比較的簡単です。しかし、市場平均を超えるアルファというのは、簡単には得られません。ファンドマネージャーが運用するアクティブファンドと呼ばれる市場平均を上回る運用成果を目標にしたファンドでも、実際にインデックスより良い運用成果になっているのは半分程度です。

超過リターンを得るためには、市場に「歪み」を見つける必要があります。誰もまだ気が付いていない有望な銘柄を人より先に見つけて投資するというような、情報の偏在による歪みを見つけることが必要になるのです。

金融の世界は効率性が高く、この歪みを見つけることは簡単ではありません。株式市場では多数の市場参加者がいますから、歪みがどこかに発生してもすぐに誰かに気が付かれてしまい、超過収益を得る機会が消えてしまうのです。

歪みから超過収益を狙うアルファというのは、金融市場のようなペーパーアセットのマーケットより、不動産のような実物市場の方が得やすいように見えます。取引の規模が比較的大きく、また取引コストが高いのと、取引所のような透明性の高い売買の場が無いことから、価格に歪みが生じやすいのです。

最近、金融の世界で仕事をしていた人が、実物投資の世界へ参入するケースが増えています。外資系金融機関で株式や債券のトレードをしていたような人が、不動産売買を手掛けるようなケースです。

この背景には、実物投資の方が、アルファによる収益が多く、リターンを上げやすいということがあるように見えます。割安に放置されているような収益機会があちこちに存在し、金融の世界にはありえないような効率性の低いマーケットになっているからです。

投資家からみれば実物資産には、そのようなメリットがある一方、金融商品のようにマーケットで比較的低コストでスピーディに売買できるという利便性はありません。現金化するのには時間とコストがかかります。

だからある程度の資産を持っている人は、金融資産と実物資産を組み合わせて保有したほうが良い。これが私の結論です。それぞれの投資対象にメリット・デメリットがあるからです。

今週発売になっている週刊文春に「僕が自腹で買っている金融商品」という文章を3ページ掲載していただきました。金融資産と実物資産の投資方法についてまとめてありますので、参考にしてみてください。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年8月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。