「金鉱よりもスコップ」というのは、投資の格言の代表例で、成長分野へ投資するときの古典的手法を表している。
金鉱を掘るためのスコップを供給する商売は、金鉱を掘ることよりも有利だ。金鉱が掘られ続ける限り、消耗品であるスコップに対する需要は安定するからである。スコップ製造販売業は、金鉱を掘り当てるという究極の不確実性を制御する一方で、金鉱を掘ることから生まれる収益には巧妙に参画しているのである。
成長といえば、コンピュータ技術の革新に始まる情報革命などが代表的なものだ。しかし、情報産業という巨大な鉱脈にも、金鉱とスコップのような連鎖の関係は必ずある。中核を形成する基礎技術の革新と、そこから二次的・三次的に派生する付随的需要との関係である。半導体の革新がコンピュータの革新を招き、それがソフトウェアの全面的更新へつながるというように。
中国の成長は、世界経済の成長にとって、極めて重要なエンジンである。中国は金鉱である。しかし、中国経済の規模と発展度に比して、中国の国内資本市場の規模は相対的に小さく、発展度も相対的に低いのが現状である。ならば、中国という金鉱に対する関係で、スコップに相当するものに投資すればよい。
そこで、グレーターチャイナGreater China、即ち、拡大中国という投資の考え方になる。中国の成長から恩恵を受ける企業群に投資をするのである。中国の外には、中国の成長から恩恵を受ける企業がたくさんある。ニューヨーク、ロンドン、東京など、高度に発達した巨大な株式市場の中に、たくさん上場されているのだ。また、中国本土周辺のアジア各国の株式市場にも、たくさん上場されている。
中国の成長へ投資を、中国企業そのものではなく、その周辺の企業へ投資することで実現しようというのが、グレーターチャイナという投資手法である。「チャイナよりもグレーターチャイナ」というのは、「金鉱よりもスコップ」という格言と全く同じことである。
森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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