2020年「東京オリンピック」が正式に決定した。生産誘発額、付加価値誘発額、雇用者所得誘発額、五輪特需での消費拡大と経済波及効果は絶大なものになるであろう。五輪収支は、売上面ではTV放映権料金、スポンサー収入、入場料収入、記念グッズ販売などが主であり、インフラ整備を既に第一回大会を経験した東京五輪は、ロンドン五輪と同じく既存施設が多く改修で対応することが可能で、設備投資面で新規のスタジアムなど低コストで建設、税を過剰に使わずに運営することができることから、大会収支も大幅な黒字が推測される。
決定にあたりIOCクレイグ・リーディー副会長は「東京は福島の問題に取り組んでいる。五輪が開かれるのは来週ではない」と汚水漏れを問題視しない考えを示した。震災復興と東京五輪は同時成立しないとする懸念は、日本の技術力への国際信用と史上最高のプレゼンテーションにより、合理性・妥当性をもって二律背反の支持がなされた。震災復興を実現させ、そして東京五輪を成功させる。武士の一言として、粘り強く責任を果たすことが、政府と国民の国際公約になったとも言える。
東京オリンピックで危ぶまれたレスリング競技も復活決定した。「より速く(Citius)、より高く(Altius)、より強く(Fortius)」オリンピックの永遠理念を最後にしめくくる、世界最古のスポーツが廃止されることはコンセプトプログラム上、冷静に考えればありえないことでもあった。フリースタイル、グレコローマンスタイル、ランカシャースタイル(Catch As Catch Can)のレスリング3大ルール規制前の古代闘技はパンクラチオン(Παγκρατιον※二番目の「α」は鋭アクセント記号)と呼ばれギリシャで生まれ「全ての力」を意味した。「Wrestling」は世界最古の近代スポーツであると同時に世界最古の近代闘技である。
その昔、哲学者プラトンは本名をアリストクレスといったが、「Wrestling」で鍛えたプラトンの肩幅が広いことから、その意味をもつプラトンと体育教師が渾名で呼びその名が世界に浸透する。西洋最大の哲学者アリストテレスはプラトンの元で「Wrestling」を学び、アレクサンドロス3世の「Wrestling」師傅となり哲学、文学、科学、医学、弁論術を教えた。紀元前334年、アレクサンドロス3世はアレキサンダー大王となり、わずか10年でマケドニア・ギリシア連合軍古代マケドニア王国を率い世界統一を成す。
東方遠征によるマケドニア・ギリシア文明の広がりとともに、国力の基となる「Wrestling」の身体鍛錬の伝統性と重要性は日本の「武道」を含め世界中に広まり、各国各地の生活文化に応じたオリジナル闘技が創生されていく。世紀を跨ぐ世界最長の戦国時代(1467年~1573年)を経験した日本では袖や襟あるいは帯を利用し、衣服と闘技を連携させるイノベーションが長年研究された。日本の伝統的な着物や袴のデザイン、モデリング、マテリアルをふまえ、梃子の物理学を活かした護身術の創意工夫により、投げ技・倒し技・絞め技・極め技に多彩性をもつ「柔」「合気」が「剣」と共に武道術として系統形成され、やがて現在のスポーツ化されたオリンピック競技「Judo」へと繋がっていく。
「Wrestling」や「Judo」などの組打ち闘技は、攻撃と防御おけるあらゆる体勢で、自身と相手を制御し制圧するバランスが最も重要で、これにスピードとパワーと柔軟性、戦略や解析する知性など調和的鍛錬により心・技・体・知の人間力を総合的に高めていくことに、達成の主眼と目的がある。フランスの柔道人口は日本のそれよりも多いが、グローバルスタンダード世界基準において、「Wrestling」や「Judo」がなどの闘技武道が世界の人々に受け容れられるのは、身体と精神バランスの追求、永遠なる修養による自己克己と人物創造。アクティビティーな行動エネルギーに共生する礼儀とホスピタリティーが、その概念の本質にあるゆえである。
松田宗幸 Muneyuki Matsuda
株式会社 M ホールディングス(M HOLDINGS CO.,LTD.)代表取締役 CEO
ツイッター