米連邦公開市場委員会（FOMC）がQEを見送りダウ平均とS&P500が最高値を更新したと思ったら、やっぱりきましたね。新会計年度が開始する10月1日までに予算案が成立するメドが立たず、政府機関が閉鎖に追い込まれるリスクが台頭してきました。おかげでダウ平均とS&P500は4日続落し、FOMC後の上昇を完全に打ち消しています。
民主党のリード米上院院内総務は24日、米東部時間の翌25日午後12時に審議開始動議を行う見通しを示しています。27日か28日までに審議打ち切り採決を実施する方針を与えたかたちですね。米下院が25日に可決済みの医療保険改革案（オバマケア）向け予算を削除した12月15日までのつなぎ予算案に対し、オバマケアを盛り込んだ11月15日までの予算案を取りまとめ、29日の日曜にも通過ライン51票の修正案で米下院へ送り返すことでしょう。焦点は、米下院が修正案を期限ギリギリの30日に可決できるかどうか。予算案を巡るチキン・レースは、今週末から週明けにかけ山場を迎えます。
開戦前夜、宣戦布告通り共和党のティーパーティー派のテッド・クルーズ米上院議員（テキサス州）は米東部時間の午後2時40分頃から、予算審議を阻止するため議事妨害（フィリバスター）に打って出ていますね。
テキサス州上院のデービス議員のように、足元はスニーカーなんでしょうか？
とはいえ米上院の手続き上の問題で議場を明け渡す必要から、パフォーマンスの域を出ないんですよ。賛同者も、マイク・リー議員（ユタ州）、
共和党の米上院上層部と他議員多数がフィリバスターという強硬スタンスを支持しない理由は、「政府機関の閉鎖で得点をあげるのは、オバマ」と考えているためです。フィリバスター作戦を批判するように、ピュー・リサーチが実施した世論調査をみると、政府機関の閉鎖で責任を取るべきは・・「共和党」との回答が39％でした。オバマ政権の36％をわずかながら上回っています。2014年に中間選挙を控えるため、僅差とはいえ共和党にとっては見逃せないのでしょう。
政府機関閉鎖は、現状だとやや共和党に不利な状況。
ところで、政府機関が実際に閉鎖すればどうなるのでしょうか？知っておくべき6点をご紹介します。
1）政府機関の閉鎖はこれまで何回？
1976年に予算過程が修正されてから、実に17回発生しました。カーター政権（1期4年間）が6回、レーガン政権（2期8年間）で8回、ブッシュ・シニア政権（1期1年間）で1回、そしてクリントン政権（2期8年間）で2回となっています。最長はクリントン政権下で1995年12月16日から96年1月6日までの22日間です。
2）治安はどうなる？
例えば米連邦捜査局（FBI）は会計年度から本部から支部まで、10営業日の閉鎖を示唆しています。ただしテロ捜査を含む安全保障、治安、国境警備など「必要不可欠」な任務は継続する見通しでカオスと化すことはありません。
3）社会保障・医療保険は未払いに？
社会保障の支給、医者・医療機関への高齢者向け医療保険および低所得者向け医療保険（メディケア、メディケイド）払い戻しは、10月末まで行われる予定。11月1日以降もずれ込めば、最大2週間遅れとなります。
4）郵便配達は？
米郵便局は、通常営業です。
5）国立公園、米連邦運営の博物館など施設の観光は可能？
あきらめて下さい。1995～96年のケースでは、368ヵ所の国立公園をはじめスミソニアン博物館をはじめとする施設も閉鎖されて700万人もの観光客を失ったといいます。
6）ビザ・パスポートの申請の影響は？
政府機関の閉鎖で、まともに影響を受けます。1995～96年のケースではパスポートを申請したアメリカ人20万人、外国人によるビザ・パスポート申請3万人の処理が一時停止となりました。
オバマ政権では、2011年4月にも政府閉鎖の危機が訪れながらギリギリで回避に成功しました。今回はオバマケアを巡り両者が真っ向から対立しており、期限切れを迎えそうな予感がしてなりません。
編集部より：この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年9月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。
