どうなる、機能不全寸前のアメリカ --- 岡本 裕明

アゴラ

アメリカが機能不全状態に陥る可能性が高まってきました。政府部門の一部閉鎖が10月1日からおきそうなためです。まさに「アメリカは何処に」ということになりそうです。

今回の問題は10月1日から新年度入りするアメリカの連邦政府予算が決まらない為、新年度に入れないという状況にあることです。暫定予算案にしろ、その骨格の一つにオバマケアという共和党の大反対する国民保険条項があり、これが与党民主党が主導する上院と野党共和党が主導する下院で行ったり来たりしているのです。


本稿を書いている9月30日の朝の時点では10月1日までの解決は悲観的な状況となりつつあり、このままでは1996年以来の政府部門の一部閉鎖となるかもしれません。査証部門の閉鎖などで我々にも一部で影響は出てくることになりそうです。

しかもこれは暫定予算であって、ひと月とかふた月とりあえず執行するという議論ですら悶着しているのです。その上10月中旬には債務上限問題もやってきます。これはアメリカが国債発行額を厳しくコントロールしており、間もなくその上限に達するにあたり、上限を増やす決議をしなくてはいけません。今年のはじめ、この問題が大きな話題となった時はアメリカはデフォルトするのか、とさえ騒がれました。

アメリカはまさにねじれ議会でもがきにもがいているという状況にあるのです。

日本でもねじれに苦しんだことは記憶に新しく、7月の参議院選挙でねじれ解消されたことは与党の政治家のみならず日本全体に安ど感を与えました。それは政治家の不毛な駆け引きで国民と国政が振り回され、先が見えない状態が長く続き、どうにもならない不安感が生まれたことにあります。

ただ日本は解散総選挙という手法が取れますが、アメリカの場合はそれができません。つまり、オバマ大統領は国内がどれだけねじれ、、もめ、法案が通過しなくても3年半は在任するのであります。これはアメリカにとっては極めて不毛な時を過ごさねばならないといえましょう。

折しもオバマ大統領の政治的手腕については先般のシリア問題やFRB次期議長指名問題などを踏まえ、やや懐疑的な人が増えているとみています。支持率は6月調査の45%から更に数ポイント減から場合により大台割れまで覚悟しなくてはいけない状況にある気がしております。日本の首相は支持率が10%台でも最後は解散すればよいのですが、アメリカはそういうわけにはいかないところに大きな懸念があるのです。

例えば為替を考えてみましょう。基調は円安ドル高とみられています。しかし、これは経済面だけを見据え、量的緩和からの離脱を前提としています。しかし、アメリカが政治的に機能不全となれば回復基調にある経済は伸びを欠き、量的緩和の離脱時期はさらに先延ばしになるかもしれません。そうなれば世界のマネーは米ドルから安全通貨である円を買う動きが出て来てしまうのです。事実、これを書いている今、すでに97円台に突入していますが、政治の不安定感はあらゆるところに波及していくことになるのです。

私は年初、今年の勝者はアメリカと日本と予想させていただきました。日本はその通りになりつつありますし、アメリカについてもひと月ぐらい前までは勝者とされていました。しかし、このまま、国内問題の処理に明け暮れるようになれば勝者の地位は懐疑的にならざるを得ません。あと3か月と最後のストレッチに入りつつある2013年ですが、アメリカは先頭集団からこぼれ落ちてしまうことにならなければよいと思っています。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年9月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。