感慨深い日米の「攻守逆転劇」 --- 岡本 裕明

アゴラ

今日10月1日は日本は消費税上げ決定と5兆円規模の経済対策の抱き合わせ発表が夕方頃にありそうです。一方、アメリカでは新年度の連邦政府予算案が通らず、午前0時まであとわずかという状況になってきました。つい4、5年前には想像できなかったような日米攻守逆転であります。

これを山崎豊子さんならどう表現するのか、と思ったりもしますが、お亡くなりになりました。お悔やみ申し上げます。私は昭和の問題を丹念に調べ上げた数多くの力作に引き込まれ、ファンの一人でありました。至極残念であります。


さて、消費税上げの決断発表を10月1日にするというのはある意味、遅すぎでした。なぜなら、住宅や一般の工事などの請負契約は9月30日までに契約しないと旧税率が適用されないのです。つまり、上がるか上がらないかわからないのにその日までに契約せざるを得ない状況がありました。

実を言うと私も昨日の午後遅く、開発事業の工事請負契約を締結してきました。昨今の工事費は人件費の上昇もあり、時間がたてばたつほど価格が上昇する傾向にあります。また、一部のゼネコンなどは受注している請負工事に対して人件費の上昇が追い付かず、収益が圧迫しているケースが見受けられるようです。また、本来ならば消費税上げ決定後は受注の反動減があると考えそうですが、建設業界については手持ちを十分すぎるほど抱えているうえに今後、オリンピック関連と称して土木やインフラ工事、関連施設、さらには復興関連がいよいよ本格化している福島、また、リニアモーターカーの土木工事も予定されています。つまり、価格が下がる要素は全くないのであります。巷では東北や北海道の職人は福島から下には降りてこない、とも言われており、結果として関西など西日本から東京に職人を持ってくることになりそうです。

そんな業界の状況ですので9月30日までに請負契約をすれば単純に3%相当の消費税分が安くなると考えて良かったかと思います。ただ、消費税が上がらなければどうなるのだろうという一抹の不安はありましたが。(笑)

さて、この建設ブームは実は日本には良い傾向のはずです。なぜならば人手が足りない為に人件費が上昇しているということですから労働者の給与に直接的に跳ね返り、デフレ脱却には非常に好都合のパタンを形成するのです。建設業界は自動車業界同様すそ野が非常に広い業界であり、また、飲食への出費も比較的多く、経済の波及効果という点ではもっとも有効な業種だと思います。

一方のアメリカ。昨日も書いたので重複内容は避けたいと思いますが、私が懸念しているのはもしも午前0時を回ったら暫定予算を通そうという緊張感が一旦緩み、目標期日を失う結果になりやしないかと思っています。現状、議会の状況を見る限り、オバマケアの譲る、譲らないの攻防となっており、時間切れになった時、共和党は予算不成立とした責任上、オバマケアに関して何らかのお土産を引き出さないことには責任問題が生じてくるはずです。同じことは民主党にも言えるわけですが。

ウォールストリートジャーナルに掲載されている影響を受けるところ、受けにくいところのリストを見ている限り、国防や安全などはほぼ平常通りで、環境とか国立公園の運営など、短期間なら我慢できるところから閉鎖されるようです。

金融市場ではあきらめムードなのでしょうけれど、これが2週間も続き、債務上限問題と抱き合わせということになれば先行き全く予断を許さない状況になります。ただ、これはリーマン・ショックのような想定を超えた衝撃というより、政治家のバトルであって「合意」さえすれば何もなかったかのように収まってしまいます。まるで石が体外に出てしまえばぴんぴんする結石の患者のようなものであります。

イタリアも問題を抱えていますのでとりあえずマネーは動きにくくなり、一時的に政治が安定して、先行き明るさが漂う日本に向かうような気がしております。

さて、明日はどうなっていることやら、というのが今の正直な感想です。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年10月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。