日本ではアウトレットが更に増える勢いのようです。成田空港に降り立つ訪日外国人を当てにしたアウトレットもあるようです。私も日本に行けばたまにはアウトレットを訪れますが、週末のその混み具合は繁華街のそれに匹敵するものです。日本のアウトレット、一般的には安く買えるというイメージが先行するのですが、その本家アメリカではもはや、青色吐息というところもあるようです。
アメリカのハイウェイ沿いのアウトレットにはいつも多くの車があふています。そしてそこには通常値引きの上に今日だけのスペシャルプライスなどを店員から「囁かれ」たり、割引チケットを渡されたりして顧客の気を引きます。ところが私も何年もアメリカのアウトレットを見てきましたが、最近、その客の入りに疑問符がつくところが目立ってきています。
たとえばワシントン州ではかつてもっとも華やいだとされるオーバンにある「スーパーモール」。1995年開業のこのモールは初年度こそ1400万人もの来場者を集めたもののその後、鳴りを潜めています。私なりの不振の理由を考えると陳腐化した商品に魅力はなく、商品陳列もわかりにくく、要は欲しいものがない(あるいは、見つからない)ということではないかと思います。今年、昔を懐かしむぐらいの感覚で一度行きましたが、あまりにも閑散としているのにはびっくりというよりこんなところに来た時間を返してくれ、ぐらいのものでした。
同じことはオレゴン州ポートランドの南のウッドバーンにある同州最大のアウトレットも同じです。ここには収税ゼロのオレゴンのお得感に惹かれるのか中国人がやたら多いのも特徴でしょうか? 中国語が飛び交っているそのモールはまるでバンクーバーにいる感覚であります。店舗を覗けば有名ブランドの店ではレジに長蛇の列があるところもありますが、百数十ある店の8割は客がまばらにしか入っていません。
ではアメリカ人はどこで買い物をしているのでしょうか?
私の見た限りでは通常のモールではないかと思います。通常モールはアウトレットのような「売れ残り」を「雑然」と置いているのはなく、商品陳列も店員の知識もしっかりしていますし、いわゆる最新のものやサイズがそろっているという点が大きいかと思います。また、モール自体、どこも相当お金をかけてしっかりデザインされているところはカナダでも同じです。また、値引きについても時期や商品によってはアウトレットと比べても遜色がないほどかなり深い値引率を提示していることもあります。
つまり、アメリカのアウトレットは価格だけが取り柄のモールでしかなかった、ということでしょうか?
アメリカはアウトレットを買い物するだけの場所として開発し、フードコートも二級の店が並び、そこで食べる楽しみは存在しません。一方、日本ではアウトレットが商店街のような賑わいを演じているところは明らかに違います。子供の遊び場も充実しているし、見て楽しいと思わせる工夫があちらこちらに施されています。つまり、開発業者(日本は三井が主力ですね。)の力量の違いと不動産所有者が実業者か投資家かの違いが大いに出たということではないでしょうか?
日本でも多くの出店企業はアウトレット用製品として一般の商品とは区別したものを販売する場合を良く見かけます。つまり、一流ブランドの商品を買うという消費者の心はくすぐるのだと思いますが商品自体は多少、違いがあるのかもしれません。しかし、日本はくれぐれもアメリカのような失敗を繰り返さないよう工夫をする必要があるかと思います。
幸いにして日本のアウトレットは商品陳列も美しく、一般店舗となんら変わらないサービスを提供している店が多いようです。であるからこそ、日本のアウトレットは日本独自の発展を遂げてもらいたいと思います。
今日はこのぐらいにしましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年10月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。