日本と韓国の政治的関係は底冷えする状況になってきました。どう贔屓目に見ても朴槿恵大統領が異様に突っ張っているように感じます。ここまでくると政策的な距離感というより個人の感情がむき出しになってしまっており、今後の政策も気持ちに揺さぶれるかと思うと両国間の関係改善には距離を感じないわけにはいきません。
朴槿恵氏のイメージは毅然、ぶれないという言葉で表されることが多いと思いますが、一方で人を信じない性格とも言われ、父親譲りの独裁的性格があるとされています。この手の性格の人の場合、一般的には自分で事実を発見し、確認しない限り方向変換が出来ない人も多く、過信した自己判断が間違っていれば崩壊の道へ突き進むこともしばしばあります。
安倍総理は朴槿恵氏とすれ違った際にも声を掛けてはいるもののそのやり取り振りからは心を開いていない状態にあったと見受けられます。「よく韓国料理を食べます」という安倍総理のソーシャルトークも軽く受け流されたわけですが、雰囲気的にはそっぽを向く朴大統領とうわべだけの社交辞令に作り笑いの安倍首相というイメージが強く見て取れます。
朴大統領は「国民幸福社会」を打ち出し、大衆目線を意識すると同時に女性目線でもあります。惣菜市場でのショットなどは朴大統領のイメージを強く打ち出しています。(ちなみにオバマ大統領のイメージはサンドウィッチをぱくつく姿なのですが、安倍首相はスーツ姿のいつもの表情以外思いつきません。庶民的イメージがない点は安倍首相の弱点かもしれません。)朴大統領にとっては慰安婦問題は譲れない問題であり、韓国側の目線として固執することになるでしょう。
日本側はむしろ放置の構えで最近ではメディアでの韓国の取り上げ方も少なくなってきている感があります。韓国自体経済的にもさえない動きが続いており、サムスンも遠くない時期に守りの経営になるときが来るはずですから韓国が誇れるものがいよいよ少なくなってしまいます。
事実、朴大統領の政策は成長重視から社会福祉への政策転換であって悪く言う向きは「中進国の罠」に逆戻りではないかと指摘しています。中進国の罠とは一人当たりGDPが1000-12000ドル程度の新興国が成長鈍化でこの水準から脱せない状態を言います。韓国の場合にはその水準をはるかに上回る23000ドル程度まで発展しておりますのでこの表現は当たらないと思いますが、今後の同国の発展には大きな難関が立ち向かっていることは間違いありません。
それは5000万人という人口が中国や日本などと比べ規模の経済効果を生みにくいこと、更には日本より低い出生率、更には社会保障制度などは日本に比べはるかに遅れており、社会基盤の整備を後回しにしたツケが廻ってきてる状況であります。
となれば本来は隣国との協調が重要な政策となります。そして朴大統領の場合、明白に中国を選び日本を放置したということです。これは韓国というより朴大統領が人口が多く歴史的に中華思想をシェアする関係の中で自分のロジックとして選択をしたと見たほうがよさそうです。それは大統領のご判断ですので構いませんがその方向転換は簡単には出来ないことは過去の例を見ればいくらでも証明できます。直近でもメドベージェフと日本の関係、あるいはオバマとプーチンの関係は良い例でしょう。フランスもサルコジとドイツのメルケルの関係は蜜月でしたがオランドとはやや遠くなりました。日本でも鳩山由紀夫氏とアメリカの関係が悪化したときその関係修復には日本の首相の顔を変える必要がありました。
多分ですが、日本か韓国のトップの顔が変わらない限り日韓の根本的関係改善は望めません。そして今回の場合、朴大統領が日本との距離感をイニシェートしておりますので朴大統領任期中はあきらめるしかないとみたほうが良いのかもしれません。安倍首相とってはトルコより近いのにトルコより遠い国となりそうですね。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年11月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。