2年に一度の「国際ロボット展」が、お台場の東京ビッグサイトで11月6日から9日まで開催されていました。主催が日本ロボット工業会と工業系新聞社ということで、出展は産業用ロボットが主。サービス用の汎用ロボットのエリアは、面積だけは広いんだがけっこうガランとしてました。やはり日本でロボットと言えば、まだまだ産業用ロボットが主流なんだな、という感じです。
もちろん、前回の国際ロボット展とは違う部分もありました。それは産業用のロボットも「人との協調作業を行う」方向へ本格的にシフトしてきた、という面です。たとえば、人間型のヒューマノイドロボットを産業用でかなり多く見かけました。人と同じように2本の腕を持ち、緻密な作業をするロボットたち。工場で人とロボットが一緒に仕事をする、という技術は、サービス用の一般向けロボットにも応用されることになるでしょう。
川田工業の双腕ロボット「NEXTAGE」。これは出力80ワット以下。
ところで、厚生労働省の告示によると「動作系に80ワット以下のモーターを使っているものは産業用ロボットではない」そうです。逆に言えば、80ワット以上のモーターを備えたロボットは、安全上の必要性から周囲を柵で囲い、作業半径に人が入れないようにしなければなりません。この「80ワット規制」は日本固有のものらしく、国際標準では通用しない制限です。
しかし、今回の国際ロボット展では、人と一緒に作業する「産業用のロボット」という、現状の厚労省告示では「産業用ロボット」の範疇に入らないロボットがたくさん出ています。80ワットという基準がどうしてできたのか、といえば、そのパワーが人間にとって危険だからでしょう。ところが、技術革新により、80ワットかそれ以下のモーターでも以前よりパワフルな作業が可能になっている。実際、トヨタのスペアタイヤ自動搭載ロボットでは、80ワット以下の出力で可搬重量25キロを実現していますし、今回の国際ロボット展で川崎重工が出展していた「AYATSURI」なるロボットは、80ワット以上の出力を持ち、約30キロのバイクの前輪を人と協調して装着する作業の様子をデモしていました。
つまり、厚労省の告示が技術の進歩にそぐわなくなり、国際的な標準でもないため、国内の産業用ロボットメーカーが海外での競争に勝てない、という現実にそって、この規制も変わりつつあるようです。厚労省は2013年度中に、センサーなどで人を感知し、自動的に停止するような安全装置をつければ、80ワット以上のものでもロボットの近くで人間が作業するよう規制緩和するらしい。この動きを受け、今回の国際ロボット展が少し様変わりしてきた、というわけです。
ロボットベンチャー「CYBERDYNE」製の「HAL」をベースにした災害対策用ロボットスーツ。これは人間に装着し、人間の能力を「拡張」する、いわばサイボーグ型ロボット。放射線被ばくを低減する機能や作業員をセンサーで安全管理する機能などを持つ。
一方、個人的に興味深かったのが、明治大学理工学部の「武野研」が出展していた「意識あるロボット」です。ニューラルネットという人工知能を使い、ロボットに鏡を見せて「自己と他者」を区別させる、という研究をやっている。学生さんがいろいろ説明してくれたんだが、「鏡」というもの自体、とても不思議なものです。「鏡像」は、どうして左右が逆になっているのか。実際に鏡の向こう側にいる物体は左右が逆ではないのではないか。水平だけでどうして垂直で逆さまにならないのか。鏡に映った「自分」をどうして「自分」と認識しているのか。ロボットのみならず我々でもよくわからない。そんな難しいことをロボットにさせる、というチャレンジがとても壮快な感じがして、けっこう長く説明を聞いてしまった。ありがとうございました。
RBB TODAY
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アゴラ編集部:石田 雅彦