国内では「格差拡大」、国外では「格差縮小」の社会がやってくる --- 内藤 忍

アゴラ

株式市場が上昇し、円安が進むと、国内における貧富の差が広がります。株式や外貨資産のようなリスク資産を保有している「リスクテイク型」の人の資産は円ベースで増えていきます。一方で、預貯金中心の資産保有をしている「リスク回避型」の人たちは、名目では増えず、実質的には円安で減っていくことになるからです。


リスクテイク型の人には当然相場変動に伴う資産の変動リスクがあります。しかしリスク回避型の人にも「リスクを取らないリスク」があるのです。

そして国内で、このような格差が広がるかどうかに関わらず、新興国と日本の関係で見ると、国内とは逆に格差が狭まる方向に動いているのです。

例えば、日本の経済成長率が2%で、アジアで7%の経済成長を続ける新興国があるとすれば、1年間で、5%格差が縮んでいくことになります。分母が違いますから、成長率だけで単純に比較はできませんが、新興国が急速に豊かになっていくことは確かです。

新興国の中でも、例えばマレーシアは2020年に先進国入りするという国家目標と立てて、戦略的に経済成長を薦めています。計画通りに、目標が達成されるかどうかはわかりませんが、クアラルンプールの中心部を歩いていて感じることは、東京と比較して衛生状態やファッションセンス、食のクオリティのギャップが急激に小さくなっていることです。

同じことは上海でも感じました。ショッピングモールの品ぞろえや建物といったハード面でのインフラは、東京と上海ではほとんど差を感じません。むしろ、ハードだけで見れば、東京より上海の方が大きなスケールで作られている施設が多かったりするのです。

日本が高度経済成長を続けていた時は、日本人であれば誰でもその恩恵によって、豊かな生活へアップグレードすることができました。ところが、日本の経済成長は平均で見ると低位安定になり、今や新興国の人たちが日本の高度成長期と同じような恩恵を受けているのです。

日経平均が上昇している時は、どんな日本株を買ってもそれなりに儲かる人がほとんどです。市場全体が上昇している中では、多くの人がその恩恵を受けることができます。ところが、日経平均が横ばい、あるいは下落すれば、その中で値上がりする銘柄を探すのは困難です。

日本経済の中で生活している日本人は、平均的なことをしていたら、低位安定のリターンしか得られません。その中で、リスクを取っている人との間に格差が広がる可能性があるのです。そして、新興国の豊かになった人たちが、先進国と同じような豊かな生活を享受し始める。

このように考えていくと、日本国内で横並びに満足し、平均に甘んじていると、これからどうなるかが見えてきます。

経済的な豊かさがすべてだとは思いませんが、お金の制約から自由になるというのは誰でも実現したいことの1つだと思います。現実を見つめ、何をすべきか真剣に考え、それを行動に移せる人こそが、後悔しない人生を手に入れられる。「評論家」ではなく「実践家」になることが求められているのです。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年11月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。