韓国政府はTPP交渉参加表明をしなくてはいけない日がいつか来ると思っていたけれどその日が来ないでほしいとも祈り続けていたのでしょうか? それは事実から目を背け、楽な方になるべく長くいたいという気持ちでもあったかもしれません。実に消極的な結果としてのTPP参加交渉表明となりました。
李大統領時代は米国やユーロ圏とのFTAで日本に圧倒的差をつけ、韓国経済の勢いを見せつけたと言ってもよかったでしょう。ところが日本はそう簡単にへこたれることはありませんでした。勿論、日本がTPP交渉参加表明に至るまでに政府間を始め、国民は激しい意見交換をしたことも事実です。その議論を踏まえたうえで政府はTPP参加は必要であると決定した後、農業など各方面への対策を打ち出します。また、産業内での意識の変化も見て取れるものがあります。メディアは悪く言えば言論統制のような気がしないでもないのですが、いつのまにかTPPを基本的に肯定する姿勢となり、今や日本国内ではTPP参加はありき、という雰囲気に変わってしまっています。
韓国でもアメリカとのFTA交渉がまとまった時、国内で激しい反対運動があったことも事実です。韓国の経済は我々日本人が一般的に知っているサムスン電子や現代自動車といった財閥系大手の活躍ぶりはほんの一部分の顔であり、その経済基盤は日本とは比較にならないほど小さいものであります。つまり、外国との自由貿易は日本よりはるかに厳しい環境がそこあるということです。
その中でTPP交渉参加をしなくてはいけない点については韓国が外交上もなかなか厳しい運営を迫られていることが背景の一つであります。朴大統領は中国との関係強化路線を貫き、日本にはそっぽを向いたままの姿勢ですが、韓国国内でもそれをいつまで続けるのか、という疑問は少しずつ湧きあがっています。例えば11月28日付韓国の中央日報の社説の一部はその気持ちがにじみ出ています。
「領土主権に関する限りだれも譲歩は難しい。現状維持を前提に対立を緩和し管理していくしかない。だが、現在の北東アジアには過去の怨恨と民族主義感情に国民的自尊心が複雑に絡まっている。高度な外交力が要求される状況だ。特に米国と中国、中国と日本の間で国益を守らなければならない韓国としては賢明で冷徹な外交が必須だ。
この点で朴槿恵(パク・クネ)政権の対応は失望的だ。首脳間対話すらない韓日間の極端な対立状態が長期化し米国の態度にも微妙な変化が感知されている。日本の集団的自衛権行使と軍事的役割強化を容認するなど日米関係は急速に強化されている。韓米関係が相対的に弱まる中、離於島問題などで韓中関係まできしめば韓国は深刻な外交的孤立に陥る。」
朴大統領はイデオロギーに訴えることでその求心力を高めようとしています。ある意味お父様と似ているとも言えます。しかし、世界の大国は国家運営がもはやそれほど簡単ではないことは紛れもない事実です。中国でもアメリカでも二枚舌外交が繰り返されています。習近平国家主席は日本との関係において経済は宥和方向、領土は断固たる態度としています。アメリカはオバマ大統領の軟弱外交とそれを揶揄する共和党やイスラエル、一方でビジネスはTPPを推し進め、対中国の包囲網を作るという非常に複雑な政策と事情を抱えています。
その中で大国間に挟まれた日本と韓国は同朋ともいえるのですが、強い指針と指導力を見せている安倍首相に対して明らかに停滞気味の朴大統領の政治的手腕に差が出てきたとも言えましょう。
韓国は状況を打破しない限り、今後も厳しい政策運営となるのかもしれません。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年12月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。