相当な火の車!? 猪瀬都知事の懐事情を分析する --- 渡辺 龍太

アゴラ

猪瀬直樹東京都知事が、徳田毅衆議院議員から5000万円を受け取っていたというニュースで連日賑わっている。そして、現在も猪瀬都知事は、生活に不安があったので5000万円を受け取ったとシドロモドロに主張している。

この騒動の真相がどうであれ、猪瀬氏がお金に関する不安があったのは事実なのだろう。鳩山ファミリーの様に、自分のお金が何億もあったら猪瀬知事が徳洲会と関わる必要はなかったのかもしれない。

というわけで、猪瀬知事が都知事選挙に立候補する前の、懐具合を勝手に詮索してみる。猪瀬氏は、知事になる前に東京都の副知事だった。
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これは、東京都のホームページで公開されている、副都知事の収入だ。これによると、猪瀬氏の副知事の収入は1800万円程度という事になる。

また、猪瀬氏は副知事だけでなく、作家としての収入もあったはずだ。副知事を務めている間に出版された本で有名なのは、以下の本だ

突破する力 (青春新書インテリジェンス)

突破する力 (青春新書インテリジェンス)

東京の副知事になってみたら (小学館101新書)

東京の副知事になってみたら (小学館101新書)

地下鉄は誰のものか (ちくま新書)

地下鉄は誰のものか (ちくま新書)

本の印税というのは、本体価格の10%となれば良い方だ。なので、売れている本ではあるが、猪瀬氏の本は単価の安い本ばかりだし、何十万部のベストセラーを連発していたという訳ではないので何千万もの収入ではなかっただろう。

そして、猪瀬氏の著作の突破する力に書いてあたのだが、猪瀬氏は質の良い仕事に命をかけるタイプらしい。例えば、以前に賞を取った作品を作った時は、後々の金銭の事を気にせずに、資料を集めた事が良かった語っている。

また著作の中で、猪瀬氏は良い仕事をする為に、複数の秘書を雇っている事が分かる記述が多々ある。そういった事を考えると、700円の本が10万部売れても700万円にしかならない出版事業は、猪瀬氏にあまり収入にはそれ程つながっていなかったという可能性を感じる。

この様な収入で、猪瀬氏は自分の選挙資金管理団体へ多額の貸付を行った。

猪瀬直樹の会」と同一住所で会計責任者・事務担当者も同一人物が務める関連政治団体「東京を輝く都市にする会」の収支報告書によると、収入の全額700万円が猪瀬氏からの「借入金」と、ちゃんと記載されています。

(中略)

猪瀬氏の選挙運動費用収支報告書によると、収入は猪瀬氏自身からの3000万円と、「東京を輝く都市にする会」からの50万円の計3050万円しかありません。

(引用元)

徳洲会マネーもらった猪瀬都知事/なぜ、記載しなかった 収支報告を調べてみると…

こういった出費を経て、猪瀬氏が知事になった時に行った資産公開を見てみよう。

東京都町田市と東京都港区に土地と建物を所有し、固定資産税の課税標準額は町田市の土地が約333万円(うち本人持ち分は10分の6)、建物が約270万円(同)。港区の土地が約3579万円(うち本人持ち分39分の5)、建物2029万円(同)だった。

預金は約999万円。このほか、貸付金は約6775万円に上った。都によると、本人が代表を務める法人に貸し付けているという。有価証券や車の保有はなかった。

(引用元)

猪瀬知事が資産公開、預金は999万円 – 芸能社会 – SANSPO.COM(サンスポ)

不動産に関しては、評価額ではなく固定資産税の課税標準額の公開となっている。なので、実際の価値は数倍なのだろう。しかし、事務所や自宅を売却するというのは、60代後半にさしかかる人はやりたくない事だろう。

そして、貸付金は自分の法人へとある。これが自分の作家事務所の運営資金、選挙の資金管理団体を意味していると動かせないお金だ。

そう見ると、猪瀬氏が自由に使えるキャッシュというのは、非常に少なく999万円しかない。老後の生活には、1億円必要だと言われる事もある世の中なので、猪瀬氏はまさに金銭的に困窮していた様に見える。

そういう事を考えると、石原慎太郎氏が最後に知事選挙に出たとき、「意中の人がいたが、出馬を説得できなかったから、仕方なく自分が出馬した」と言っていたが思い出される。

推測に過ぎないが、恐らく石原氏の意中の人というのは猪瀬氏だったのではないだろうか。きっと、猪瀬氏の金銭的事情がクリアできなかったのだろう、と推測出来なくもない。

とはいえ、東京の副都知事になってみたらという本を読んだり、東京オリンピックの招致に成功したという仕事結果を見る限り、猪瀬氏の仕事力は高い。

なので、そんな仕事能力の高い猪瀬氏を後継者にしたい石原氏が、徳田氏を猪瀬氏に紹介するという形で金銭問題を解決し、猪瀬氏が選挙に出馬したという構図があるのではないかと勘ぐってしまう。

もしそうなら、猪瀬氏と徳洲会の騒動は決して褒められる事ではないが、ある意味気の毒な人だと思う。なぜなら、見方によっては、都民が猪瀬氏の仕事能力の高さを「超格安」で利用した事によって、猪瀬氏がそれに応えようと追い詰められたという様にも見えなくもない。作家だけをやっていたり、選挙に出なければ金銭的にここまで追い詰めれれる事もなかったはずだ。

クリーンな政治を求めるという事は、必要な事だと思う。ただ、現状のルールでは選挙にはお金がかかりすぎる。そこを何とかしないで、クリーンさを求めすぎると、政治家という職業には金持ちしかなれなくなる。

猪瀬氏を擁護するつもりはないが、この問題を考える時は、政治家になるという事に自己資金が大量に必要だという事も同時に問題視するべきなのだろう。


編集部より:この記事は渡辺龍太氏のブログ「World Review 編集長 渡辺龍太のブログ」2013年12月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった渡辺氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はWorld Review 編集長 渡辺龍太のブログをご覧ください。