12月の米国、小売業の販売不振目立つも小売売上高はなぜか堅調 --- 安田 佐和子

アゴラ編集部

米12月小売売上高は前月比0.2%増と、市場予想の0.1%増を上回りました。前月の0.4%増(0.7%増から下方修正)から鈍化したとはいえ、コア(ガソリン、自動車、建築材を除く)は0.7%増と力強かった。こうした内容を受け、モルガン・スタンレーのテッド・ウィーズマン米エコノミストは「米10-12月期消費につき従来予想の3.6%増から3.7%増、米1-3月期は従来予想の2.3%増から2.6%増」へ上方修正してます。米11月企業在庫が予想以上だったことも重なり、バークレイズは米10~12月期国内総生産(GDP)予想を3.0%増から3.5%増へ引き上げていました。モルガン・スタンレーも、米10-12月期GDPにつき同水準を見込んでます。

でも、ちょっと待って下さい。

小売業者が発表したホリデー商戦中の結果や業績見通しと矛盾していませんか?

13日

▽ティファニー(時計・宝飾)

10日引け後に発表したホリデー商戦期間中の売上高が4%増加し、全地域での成長が寄与したと発表した。11~12月の売上高は前年同期比4%増の10億3000万ドルに増加し、為替変動の影響を除くベースでは8%増となった。また既存店売上高は6%増加した。地域別では米国の売上高が6%増の5億5000万ドル、アジア太平洋が5%増の1億9600万ドル、欧州が11%増の1億3100万ドルとなった。

2014年1月末に終了する2013年度の1株当たり利益は3.75ドルで据え置き、市場予想の3.79ドルを下回った。

マイケル・J・コワルスキー最高経営責任者(CEO)は、14年1月期の利益見通しを据え置いた上で、「全体の売上高は予想に一致し、好調な年末商戦を終えた。週明け13日の株価は利益見通しが予想以下だったため、2.2%安で引けた。

▽ルルレモン(ヨガ関連衣類)

11~1月(第4四半期)の1株当たり利益見通しを従来の78~80セントから71~73セントへ引き下げた。市場予想の79セントを大きく下回る。売上高見通しも最大5億1800ドルとし、従来の5億4000万ドルから下方修正。既存店売上高も小幅マイナスから1~5%増にとどめ、2009年5~7月期以来のマイナスを予想した。13日に株価は一時2013年6月11日以来で最大の下げ幅を演じ、16.6%も急落した。

10日

▽シアーズ(格安百貨店)

前日引け後に発表した業績見通しで、11~2月(第4四半期)のEBITDAにつき「6500万ドルの損失から6500万ドルの利益」とした。1株当たり損益は2.01~2.98ドルの損失を予想し、市場予想の26セントを大幅に上回る損失を予想。既存店売上高も7.4%減(シアーズで9.2%減、Kマートで5.7%減)を見込む。2014年2月までの2013年度見通し(2014年2月末終了)も、1株当たり損失につき7.64~8.61ドルとアナリスト予想の6.80ドルから大幅悪化を示したため、13.8%も急落した。

9日

▽Lブランズ(女性下着、バス・ボディケア)

女性下着ブランド「ビクトリアズ・シークレット」や「バス・アンド・ボディ・ワークス」などを合わせた12月既存店売上高が2%増となり、市場予想の3.7%増以下にとどまった。11~2月(第4四半期)見通しも従来の1.67~1.82ドルから1.60ドルへ引き下げたため、9日に株価は4.1%沈んだ。

▽メイシーズ(大衆向け百貨店)

前日引け後に発表した2014年度(2015年1月終了)業績見通しで、1株当たり利益を4.40~4.50ドルとした。市場予想の4.36ドルを上回る。同時に2500人の人員削減と売上が不振だった5店舗の閉鎖を発表したため、株価は9日に7.6%も急伸した。

8日

▽ベッド・バス・アンド・ビヨンド(バス、寝具、ヘアケア関連)

前日引け後に発表した9~11月(第3四半期)決算で、純利益は2億3720万ドルだった。1株当たり利益は1.12ドルと、市場予想の1.16ドルより弱い。既存店売上高も1.3%増と、アナリスト予想の2.7%増以下にとどまる。12~2月(第4四半期)の1株当たり利益見通しも1.60~1.67ドルと、市場予想の1.79ドル以下に終わった。以上の内容を嫌気し、12.5%もの大幅安で取引を終えた。

▽コンテイナー・ストア(梱包・整理専門小売)

前日引け後に発表した9~11月期(第3四半期)決算で、950万ドルの損失を計上した。新規株式公開(IPO)のコストが重しとなったためで、調整済みの1株当たり利益は11セントと市場予想の8セントより強い。ただし売上高は1億8830万ドルと、市場予想の1億8860万ドルに届かなかった。

2014年2月までの2013年度売上高は7億5400万ドルと、市場予想の7億5600万ドルを下回った。調整済み1株当たり利益は40セントと、市場予想の38セントより強い。既存店売上高は3.4%増としており、9~11月期の4.7%増以下となり売上鈍化の懸念につながった。8日に株価は14.8%も急落した。

住宅市場の拡大で恩恵を受けるはずのコンテイナー・ストアも、売上伸びず。

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(出所 : Star Tribune)

以上をみるとメイシーズのみ上昇して引けていましたが、人員削減のサポートが大きかった。他は軒並み業績見通しやら既存店売上高を嫌気し、大幅安でした。

もちろん、上記の小売企業が全米の動向を現すものではありません。でも余りに大きい米小売売上高とのかい離は、何を示すのか。

天候要因で顧客の客足が鈍ったほか、オンラインへ小売がシフトした点は否めません。もう1つに、購買力の低下が挙げられるのかと。クレジット・カードも3ヵ月前から着実にじわじわと上昇中であるほか、消費者信用残高をみると、クレジット・カードを現す回転信用は減少トレンドを経てホリデー商戦前の10-11月に2ヵ月連続で増加していました。貯蓄率も消費が予想以上の強さをみせるなか11月に4.1%と10月の4.5%から低下し、前年同月の5.9%にも遠く及びません。

仮に米12月雇用統計のような弱い数字が続けば、少なくとも消費の伸びしろはますます小さくなりそうです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年1月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。