経団連を「捨てた」日立製作所から見えてくるトレンド --- 内藤 忍

アゴラ

定期購読している「日経ビジネス」の最新号(2014.1.20.号)の記事で目に留まったのは、「経団連を捨てたHITACHI」という記事でした。日立製作所の川村会長が経団連会長への就任を高齢を理由に固辞したという報道があったのですが、実は理由は別のところにあったという内容です。


日立製作所は14名の取締役中8名が社外取締役。3年前から大規模な社内改革を急速に推し進め、今期は5000億円の営業利益で最高益を23年ぶりに更新する見込みです。国内で盛んに言われている従業員の賃上げも既に先手を打って対応している。

日立が見ているのは日本のマーケットや競争相手ではなく、グローバル市場であり、ライバルは国内の同業他社ではなく、GEやシーメンスになっているのです。

産業界に限らず、最近日本と海外との垣根が低くなってきているのを実感します。沖縄に行くような感じでフィリピンやタイにふらっと出かけて行き、国内のマンションを買うような感覚で現地のコンドミニアムを購入する。

あるいは、海外で起業して、日本でやっているのと変わらないスタンスで、現地でビジネスを始める。

そんな日本人が珍しくなくなってきました。彼らにとっては、日本なのか海外なのかというボーダーはあまり意味の無いことに見えます。ただ、海外では円ではなく外貨で決済するという為替のリスクだけが違っている。その程度にしか考えていないのです。

逆に海外から日本にやってくる外国人も昨年過去最高だったと聞きました。円安で相対的に割安になった日本の不動産を購入するアジア人も増えています。東京の湾岸のタワーマンションの高層階は特に外国人に人気で、外人比率が高まっているという話も聞きました。

以前から思っていたことですが、「国」というものの意味が、どんどん小さくなっていき、世界がフラットになっていく流れがこれからさらに加速する予感がします。その反動として、自分が育ってきた地域の文化や自然に対する愛着が一段と増すようになり、祖国や故郷と愛する気持ちがより高まっていく。

ボーダーレスになりフラット化して、どこの街に行っても、マックやスタバがあるような世界になればなるほど、自分のアイデンティティを求める気持ちが強くなる。

「ビジネスはグローバルに、プライベートはローカルに」

そんな気持ちを持つ人がこれからもっと増えていくような気がします。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年1月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。