1月が陰線引けし、出鼻をくじかれたマーケット。アノマリーでは年間パフォーマンスまでマイナスに落ち込むリスクが浮上するなか、ウォールストリート関係者はどう見ているのでしょう?
ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのシニア・タクティカル・トレーディング・スペシャリストであるリック・ベンジグナー氏は、いたって弱気。ダウ平均のチャート・パターンに基づき、2013年12月31日にピークをつけたダウ平均のチャート・パターンが、世界恐慌直前に高値をつけた1929年9月当時に酷似しているためです。
1924—1929年のチャート・パターン。
2009—2014年のチャート・パターン。
(出所 : CNBC)
CNBCに出演したベングジナー氏は以上を踏まえ、1929年の第1弾の下げ相場に基づきピーク時から「15%の下落」を予想。ダウ平均の終値ベースだと14290ドルまでの下落を意味しますから、本日の終値15698.85ドルから10%も下げ余地があるということです。ここまで下落する一因に、2013年の終盤に上昇一辺倒できてしまった功罪を指摘。2013年にヘッジ・コストが高くついた反省から投資信託のポートフォリオマネージャーはヘッジを外した結果、マーケットの地盤が崩れやすいと説明していました。ウォールストリートでは弱気派に属する、ウェルズ・ファーゴらしい見解です。
ちなみに①ダウ平均の水準を指す縦軸、②1924—1929年がなぜか2009—14年のチャート水準に置き換えられている、③縦軸に示す最高値が15879.11ドルと1月24日の終値、④2009—2014年のチャートに明記された2004—14年、——など4つの謎が残りますが、番組では誰も指摘あるいは補足説明していなかったんですよね。不思議です。
一方で、ウォールストリートは強気派がまだまだ優勢。もっともブルな1人であるJPモルガンの米株ストラテジストのトーマス・リー氏は、CNBCに出演した際に「足元から2%以内で底打ちを迎える」との見方を示していました。高利回り債が値崩れしていないことを理由に挙げており、2014年末のS&P500予想すら「少なくとも2075p」と一貫して強気なんです。
ウェルズ・キャピタル・マネジメントの主席投資ストラジスト、ジェームス・ポールセン氏も「2週間以内で下落は反転する」と楽観的。少なくとも米10—12月期国内総生産(GDP)が示すように景気が順調に拡大すれば、エマージング市場の混乱から関心が薄れ、新規の投資家を巻き込んで米株市場に資金が流入してくると予想しています。「S&P500は10%以上もの調整に入る前に、2000pをトライするのではないか」とコメントしています。ただこのポールセン氏、2000pを超えてからは年末に向け1850pとピーク予想から約8%の調整を描いていますけどね。
強気優勢なウォールストリートの予想とは裏腹に、消費見通しはやっぱり芳しくありません。米12月個人消費支出は前月比0.4%増と市場予想の0.2%増を超えた半面、個人所得は市場予想の0.2%増を下回る横ばいにとどまりました。貯蓄率 は前月の4.3%を下回り3.9%と、2013年1月以来の低水準。2013年の個人消費が3.1%増と2011年以来の小さな伸びだったにも関わらず個人所得の2.8%を上回る増加率とは、さすが出費大好きアメリカ人です。
ウォルマートの見通し下方修正をみても、中低所得者層で懐具合いの厳しさが浮き彫りとなっています。同社は1株当たり利益につき従来の1.60—1.70ドルから「レンジ下限あるいはそれ以下」と付け加え事実上「1.50—1.60ドル」へ引き下げました。市場予想の1.65ドル以下にとどまっています。2013年度(2014年1月末終了)も、従来レンジ「5.11—5.21ドル」を小幅に下回ると予想しており、こちらも市場予想の5.16ドル以下となる公算です。
ブラジルや中国などでの50店舗に及ぶ閉鎖コスト、会員制倉庫型店舗「サムズ・クラブ」で2300人を削減するコストだけが同社の利益圧迫要因ではありません。2013年に低所得者層向け食費支援策であるフード・スタンプ支給額が50億ドル削減され、低所得者層の支出が業績を押し下げていました。今年は極渦がもたらす大寒波と積雪で電力費がうなぎ上りという事情もあり、少なくとも中低所得者層の消費見通しは明るいとはいえません。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年2月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。