こども版「ビットコインって何?」

大石 哲之

こども版 ビットコインって何?

さいきんビットコインが世の中をさがわしています。発行者も管理者もいない謎の通貨といわれていますが、いったいこれは何なのでしょう?

ビットコインというのは、ほんとうは、新しいお金でもなんでもなく、コンピュータ同士の通信のきまり(プロトコル)のことです。インターネットでいえばTCP/IPなどに相当する仕組みです。ビットコインというのはそのプロトコルを守ってつくられたオープンソースのソフトウェアです。

では、ソフトウェアがなぜお金になるのでしょうか?

ビットコインネットワークでは、ある人のアドレスから、ある人のアドレスに、数字を移動させることができます。この移動は、政府や、銀行や、ペイパルや、クレジットカード会社といった偉いひとたちがお墨付きをしなくても、ネットワークに参加しているひとすべてが、だれからだれにどれだけの数字が移動したかということと、たちどころに知ることができて、しかも、それは決してウソができない仕組みになっています。

「偉い人の判断がなくえも、みんなが正しい情報(数字の残高)を知ることができて、合意するにはどうすればいいのか?」
これはビザンチン将軍問題というコンピュータ科学の難問でした。
これは実用的な答えがなったのですが、中本哲史というひとが、これを解決する方法を考えて論文にしました。かれはそれを、ビットコインと名づけたのですね。

こういう仕組みの応用として、いちばん理にかなっているのは、数字の残高や数字の移動をお金に見立てることです。それがビットコインと呼ばれる仮想通貨になりました。

そして、だんだんとそのコンピュータ上の数字と、現実のお金を交換するようになりました。そして、その数字で買い物ですら出来るようにもなりました。これに投資するひともいて、値段があがったりさがったり激しく動いています。ほんと、人間の想像力って凄いですね。

ビットコインでは、政府のようなだれかひとりの偉いひとが、これが正しい、間違っているというように判断しなくても、みんなの合意でうまくいく仕組みになっています。
これはちょうどインターネットと一緒です。インターネットも、偉い人が命令しているわけでもないのに、みんながそれぞれ管理してうまくいっていますよね。
ビットコインも、みんなが共同して仕組みを管理をしています。そして、誰かが悪いことをし始めたら、多数決で判断します。不正を働こうと思っても、1/2以上のコンピュータが賛成しないと、通らないしくみになっているのです。

こういう仲間どうしのネットワークなので、ビットコインを送るときに、その間に入って手数料を抜くような悪どいひとがいません。休日にお金を下ろしただけで210円もとられたり、100円を振り込むのに210円の手数料をとられて赤字になることはなくなるのです。途上国から出稼ぎにきているひとが、本国にお金をおこるたびに給料の10%くらいがとんでいってしまう、といった困ったこともおこりません。ビットコインの手数料は無料なのです。
だから、ブログをかいているひとにとっても便利です。10円とか20円とかの少ないおかねをたくさんのひとから送って貰う方法があれば、広告にたよらなくても、生活できるようになるかもしれません。寄付だって手軽に募ることができるかもしれませんよ。5円、10円の寄付が手軽にできたら、ちょっとおもしろいですよね。

ビットコインの技術の仕組みはお金以外にも応用がかんがえられています。デジタルな数字に置き換えられるものであれば、ぜんぶビットコインみたいに送れるんですよ。音楽や電子書籍みたいなデジタルコンテンツはコピーし放題でしたけど、ビットコインを応用すると、他人にあげたら消えちゃって手元にのこらない電子書籍も作れるんですね。
ほかにも、株券や債権、デリバティブ、ソフトウェアライセンス、ドメイン名、クーポン券、あらゆるデジタル所有物のやりとりにつかえるじゃないかって、シリコンバレーは興奮しています。

ビットコインはいままでにない新しいしくみです。あまりに新しくて、いままでの社会の考え方や仕組みといろんなところでぶつかって、混乱を引き起こしています。このしくみで世界のひとが豊かになるのか、それとも悪くなるのか、それは利用するみんなの知恵にかかっています。人間のかしこさが試されているんですね。