フェイスブック、ワッツアップ買収190億ドルは割安? --- 安田 佐和子

アゴラ

フェイスブックは創業10年の節目に、簡易メッセージ・サービス会社ワッツアップの買収を発表しました。世間をアッと言わせた買収額は、190億ドル(1兆9450億円)。ハイテク企業としてはヒューレット・パッカードが2001年にコンパックを280億ドルで傘下に収めて以来、最高となります。

画像加工・共有アプリ会社インスタグラム買収額の19倍に相当する魅力は、以下の通り。

1)月間アクティブ・ユーザーは4億5000万人

ツイッターの2億4100万人を大幅に上回り、フェイスブックに次いで10億人突破の期待が最も高い。フェイスブックによる30億ドルの買収案を拒否したスナップチャットは3000万人。

2)毎日利用する割合、70%

フェイスブックの月間アクティブ・ユーザー数12億人に対する62%を上回る。

3)利用者数については過去1年間で倍増を報告しており、1日当たり数百万人が登録

4年間でフェイスブック・メッセージが1億4500万人、Gメールが1億2300万人、ツイッターは5400万人、スカイプ5200万人と比較すると、格段の差です。

2015年には、10億人突破か?飛躍的な伸びは、一目瞭然。

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(出所 : Facebook

4)1日当たりのメッセージ送信件数は190万件、受信件数は340万件

ワッツアップの普及で、2013年にアプリを通じたメッセージ件数は2013年に世界全体でテキスト・メッセージ(SNS)超え。2014年にはSNSの2倍増へ。

5)1日当たり6億枚の画像、2億件の音声メッセージ、1億件の動画メッセージを送信

インスタグラムの写真投稿数が1日当たり5500万枚、スナップチャットは4億枚

190億ドルという買収額は、フェイスブックが1人のユーザー当たり約40ドル支払った計算になります。ここがポイントでフェイスブック株は買収発表した直後の19日時間外取引で約5%急落した後、見事な切り返しを果たしました。グーグルが買収提案していた同社がフェイスブック傘下に入り、同社がソーシャルネットワーク帝国の反映を確固たるものにしたから?それも一因でしょうが、実は「割高ではない」との見方が広がったことも大事な理由かと。

190億ドルといえば2014年のNASAの予算を上回り、フェラーリ458Sを3万188台をお買い上げできる途方もない金額ではあります。しかし時価総額でみると、リンクトインを買収するならユーザー1人当たり153ドル、ツイッターなら140ドル、スナップチャットなら50ドルになるとの試算も。ライバル企業と比較した場合、飛ぶ鳥を落とす勢いのワッツアップは40ドル程度とあって安全な投資ともいえます。

ただし、国・地域別のワッツアップ利用者は今後の問題点となる可能性があります。年初来でみたアンドロイド・ベース売上予想に基づくの内訳ではアメリカが8.2%、ドイツで73.3%、英国で18.5%。つまり、フェイスブックで成長課題となるアジアを中心とした海外のエクスポージャーは低いんです。

アジアでは、日本でお馴染みLINEや中国テンセント発のWeChatなど強豪が並ぶ。

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(出所 : WSJ

収益源としての活用法にも、疑問が残ります。ワッツアプは使用開始1年間は無料で以降1年ごとに99セントと会員料金が発生する仕組みで会員料で手堅く稼げる半面、ゲーム売上と広告料は現時点で見込めません。ヤフー出身の共同創業者ブライアン・アクトン氏は、ジャン・コウム最高経営責任者(CEO)に突きつけた3カ条は「広告なし!、ゲームなし!、インチキなし!」。マーク・ザッカーバーグCEOはカンファレンス・コールで3カ条を継承する意志を表明し、広告掲載を検討しない方針を打ち出しています。ソーシャルネットワークの巨人がワッツアップを飲み込んだ後、どんな新戦略を打ち出すのか。収益確保の答えは、数年先に明らかになる見通しです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年2月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。