日本の2013年度の貿易赤字は13兆7488億円と、史上最大を記録しました。「赤字」というとなんか悪いことみたいですが、これって悪いことなんでしょうか? 毎日新聞の中村秀明さんは「貿易赤字は自然なことだから原発を止めてもいい」といっています。
貿易収支というのは、輸出から輸入を引いたものです。それが赤字になったということは、輸入のほうが輸出より多いというだけで、それ自体はいいことでも悪いことでもありません。輸入できるのは、それを買うお金が日本の会社にあるんだから、問題ではありません。しかし国全体としては、外国からの借金(資本収支の黒字)が増えることになります。
借金も、それ自体は問題ではありません。借金をしていない会社は、日本にほとんどないでしょう。しかし借金を返せないと、大変なことになります。毎日新聞株式会社は1977年に借金が返せなくなって倒産し、「株式会社毎日新聞」という新しい会社として出直しました。まぁ倒産も大した問題ではないといえばないので、毎日新聞の人は平気なのでしょう。
日本も今のように経常収支(貿易収支+所得収支)が赤字になると、国全体として借金がふえます。日本は外国に資産(対外純資産)を300兆円もっているので、これも今のところは返せます。しかし日本政府の借金は1100兆円を超え、あと100兆円ふえると国内の貯金(個人金融資産)をすべて食いつぶします。
そのとき海外に資産をもっている人が、危なくなった国債を買ってくれると考えるのはお人好しですが、かりに買ってくれたとしても、毎年50兆円も財政赤字が出ているので、300兆円の海外資産は6年で食いつぶしてしまいます。
それでも日本銀行が国債を無限に買い続ければ消化できますが、国債のリスクが大きくなるので長期金利が上がるでしょう。金利が上がると、日銀や他の銀行のもっている国債の値打ちが下がります。
でも日銀はお札を印刷できるので、いくら損しても平気です。安倍さんのいう「輪転機ぐるぐる」も必要ありません。日銀の金庫には86兆円もお札があるので、それをばらまけば損はいくらでも埋められるのです。でも世の中にお札があふれると、すごいインフレになるでしょう。
つまり貿易赤字も経常赤字も悪いことではないのですが、借金が返せなくなると金利が上がって銀行がつぶれ、インフレになるのです。これで政府の借金はチャラになるかもしれませんが、ペイオフ(預金の切り捨て)が行なわれると、みなさんの貯金もなくなってしまいます。いつそうなるかはわかりませんが、たぶんみなさんが大人になるまではもたないでしょう。