「音楽の都」を占拠する同性愛者たち --- 長谷川 良

アゴラ

欧州ソング・コンテスト、ユーロヴィジョン(Eurovision)でオーストリア代表Conchita Wurst(コンチタ・ヴルスト)さんが優勝して以来、同国ではヴルストさんの話題で持ちきりだ。5月18日にはとうとうファイマン首相がヴルストさんを連邦首相府に招くことになった、というところまでこのコラム欄で紹介した。話は続く。


▲ライフ舞踏会ポスターのモデルに黒ペンキでスカートが着けられた(2014年5月16日、オーストリア日刊紙「ホイテ」から)


18日の連邦首相府のヴルストさん優勝歓迎会には本人だけではなく、有名な同性愛者の俳優や関係者が招かれているという。オーストリア各地から同性愛者が連邦首相府に結集し、ヴルストさんの優勝を喜ぶというのだ。

同性愛者の権利尊重を訴えてきた人々にはこのような日が訪れるとは考えてもいなかっただろう。それだけではないのだ。ヴルストさんの優勝は今月末開催のライフ舞踏会(LifeBall)にも追い風となることは目に見えているのだ。

ライフ舞踏会はエイズ感染者への偏見をなくし、エイズへの理解を深めていくというのがその目的だが、そのポスターには性転換した有名なモデルの裸姿が描かれているなど、エイズ対策というより、同性愛促進を目的としているのではないか、と錯覚を覚えるほどだ。

ライフ舞踏会関係者はポスターがメディアの話題に上がったことでその目的を果たしたと考えているかもしれないが、そのポスターの影響は大きい。

「気分がわるくなった」「考えられない」「自分の子供には見せたくない」といった子供を持つ親の声が聞かれる。それに対し、ライフ舞踏会を支援するウィーン市関係者は「ウィーンは芸術に対して世界一寛容な都市です」と弁明している有様だ。

ユーロヴィジョンで優勝したヴルストさんは女装する一方、顎髭を生やした奇抜な姿はメディアの寵児となり、世界各地で引っ張りだこだ。BBCや米国からのインタビューで飛び回っている。一方、ライフ舞踏会は同性愛を鼓舞するようなポスターをウィーン市内の至る所で貼っている。音楽の都ウィーンは同性愛者に占拠された感じだ。

オーストリアのメディアによると、40代の女性が夜、ライブ舞踏会のポスターの女性に黒ペンキでミニスカートを着けてまわっている、という話が掲載されていた。その女性は「このような写真を子供たちに見せるべきではない。もちろん、見つかれば刑罰を受けるのは知っているが、誰も対策をしない今、緊急に自分ができることはこれしかない」と述べている。

同性愛者の権利は尊重されるべきだが、それに反対する人々の権利についても考えるべきだろう。同性愛者の権利を擁護する人々は「寛容さ」を主張するが、無制限な寛容は社会を混乱させるだけではないか。規律ある寛容さを求める。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年5月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。