ニューヨーカーの所得に占める家賃の割合は、どの程度? --- 安田 佐和子

アゴラ

米5月雇用統計でホッと安心、賃金も伸びを確認し景気はしっかりした足取りで改善をたどっている……と思ったあなた。

ニューヨークでは、アメリカ経済のひずみが如実に現れています。

ニューヨーク大学ファーマン・センターが調査した所得と家賃の変化をみてみましょう。

まずは所得。以下は、1990年と2012年の年収別の比較です。

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ご覧のように、年収2万ドル(204万円)以下が1990年の19.1%から2012年に21.1%へ、2万~4万ドル以下(204万—408万円)も16.4%から18.5%へ上昇しています。中間層を抜かして、25万ドル以上(2550万円)の高所得者層は3.4%を上回り、4.6%でした。所得格差の広がりを確認した一方で、4万ドル以上、25万ドル以下では(408万以上—2550万円以下)すべて1990年を下回る水準となっています。

ニューヨーク市の家賃をみると、中央値は2005年から2012年に11%上昇し1216ドル(12万4000円)となりました。正直もっと高い気がしますが……。特にマンハッタンが2005年の1241ドル(12万6580円)から1474ドル(15万円)と、18.8%も急伸してます。ブロンクスでさえ、2006年時点から10.3%上昇し1036ドル(10万5670円)也。対して所得の伸びはというと、たった2%に過ぎません。いかにニューヨーカーの肩に家賃の負担が重くのしかかっているかが分かりますね。

スタッテン・アイランドを除き、NY以内の家賃は2012年に全て上昇。
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では、所得に占める家賃の割合はというと……2012年時点で平均で32%でした。30%を超えると「家賃の過剰負担(rent burden)」と認定されるわけですが、ニューヨーカーの間では54%と過半数が該当する有様なんです。2000年の43~44%からは、約10%ポイントも上昇してしまいました。低所得者層にいたっては、家賃の割合が50%以上の「深刻な家賃の過剰負担(severly rent burden)」が47%に達しています。

低所得者層には、2002年から2012年にかけ、賃貸物件は12万件(5.6%)増加しました。ただし2000年以降に建設された賃貸物件の平均家賃は1550ドル(15万8000円)。10年前から数百ドルも上回り、ニューヨーカーが容易に支払える家賃とされる水準の1005ドル(10万2510円)以下は20%を割り込んでいたんです。

刑務所のような部屋が800ドルだったり所得に見合わない家賃を余儀なくされる上、フロリダ州との物価を比較しても生活費は異常に高い。爪に灯をともすような生活に甘んじている横でセレブが颯爽と横切る街ですから、自称若くてキレイな女性がJPモルガンの最高経営責任者(CEO)にどうやってお金持ちを捕まえられるか手紙を出したという逸話が生まれるはずですわ。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年6月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。