理研「改革委員会」が厳しく問いかけるもの

アゴラ編集部

いわゆる「STAP細胞」騒動は、状況が進むにつれ、渦中にあった小保方晴子理研(理化学研究所)ユニットリーダーに対する単なる同情論や擁護論が影を潜め、少しずつ沈静化しているようです。事態は、すでに理研内部の「改革」に焦点が移っている。ちょっとわかりずらいのは、理研の各「委員会」です。すでに小保方氏の「不正」や「捏造」を審査した「調査委員会」はすでにない。この案件は「不正」が立証され、現在は同氏の処分を審査する「懲戒委員会」が設置されて協議が続けられている。


理研は4月8日に「自己点検検証委員会」なる組織を神戸のCDB(発生・再生科学総合研究センター)に設置しています。これは、先端医療振興財団先端医療センター長の鍋島陽一氏が委員長で外部の専門家で構成され、「STAP細胞」に関係する研究者らが所属するCDBについて検証するもの。6月12日に報告書が出され、外部の有識者らで構成される理研の「改革委員会」に提出されています。

この理研「改革委員会」の委員長は、新構造材料技術研究組合理事長の岸輝雄氏です。「自己点検検証委員会」の報告を加えた提言をまとめ、6月12日に公表しました。この流れをみるとCDBに対する「自己点検検証委員会」と「改革委員会」は密接に連絡を取り合い、12日の提言書に収斂させたと思われます。

この提言書の内容は、非常に厳しいものでCDBの解体まで含めた内容になっています。また、小保方氏の採用過程などを批判し、今回の研究不正の背景や再発防止策などをまとめています。なぜ、こうした騒動が起きたのか、という背景について、ノーベル賞を取った京大の山中伸弥氏らの業績である「iPS 細胞研究を凌駕する画期的な成果を獲得したいとの理研CDBの強い動機があったと推測される」と書いている。また『nature』誌に掲載された「STAP細胞」論文についても「拙速に作成された」と断じ、小保方氏の「研究データの記録・管理はきわめてずさんであり、CDBはそのようなデータ管理を許容する体制にあった」と強く批判しています。

さらに「STAP細胞」騒動の背景には、ガバナンスが欠如したCDBの構造的な組織としての欠陥があり、これは理研本体についても同様、と書いている。こうした問題の再発を防止するためには、小保方氏のみならず今回の「STAP細胞」に関係する個人と組織に対して厳しい処分を行うべき、とし「任期制の職員の雇用を確保したうえで早急にCDBを解体すること。新たなセンターを立ち上げる場合は、トップ層を交代し、研究分野及び体制を再構築すること」と提言しています。

このトップ層とは、CDBの竹市雅俊センター長、笹井芳樹副センター長らを指します。しかし「改革委員会」は、野依良治理事長ら、理研トップも暗に批判しているんでしょう。これから彼らがどう自身の進退を決し、自浄能力を発揮できのるか、理研の真価が問われている、と言ってもいい。

「STAP細胞」そのものについては、その存在の有無を明らかにするため、科学的に正しい再現実験を行うように求め、それには小保方氏本人が参加し、3月5日に理研より発表されたプロトコル(手順、手法)だけで「胚性幹細胞研究あるいはiPS研究に熟練した研究者が監視役として同席するとともに、同一空間内で平行して小保方氏が実施するプロトコルに沿って再現実験を行うこと」としています。

この期限は1年。小保方氏は再現実験への参加を表明し、今回の提言でもそれを求めているんだが、これは小保方氏の免責という意味ではまったくありません。むしろ「改革委員会」としては、科学者としての最終的な責任の取り方を彼女に強く迫っているのだと思います。ある意味で科学者同士の「温情」とも考えられるんだが、仮にどんな結論が出ようとも現実に真摯に向き合わなければ、小保方氏にとって取り返しの付かない「人生の傷」になるでしょう。

一研究者・教育者の意見
久しぶりにいい文章を読ませていただいだ


Ethanol Production, Plagued by Yogurt Bacteria, Getting Viral Cure
livescience
バイオエタノールを作る際には、様々な要因で効率性が阻害されます。これは一種のアルコール発酵なので、嫌気性の菌類が作用するんだが、ヨーグルトの乳酸菌など、好気性の菌類が繁殖して嫌気性菌類の働きが不活性化されたりするらしい。抗生物質などを使わず、この乳酸菌を制御するための技術が必要なんだが、これは、そのために菌類に感染するウイルスであるバクテリアファージに活躍してもらおう、という記事です。ファージは好気性菌類にベクターのように侵入し、悪さをしないように改造してしまうようです。

A New, Terrifying Mosquito-Borne Virus Hits the United States
inhabitat
蚊によって媒介される病気で有名なものはマラリアなんだが、米国では今、チクングニア熱(Chikungunya fever、CHIKV)というウイルス性の伝染病が流行り始めているようです。このウイルスを媒介する蚊に刺されると、2日から2週間の潜伏期間を経て、40度にも達する高熱と関節痛に襲われるらしい。この関節痛は長い患者では2年も続くこともあり、現状で有効な治療法はありません。ワクチンの開発も儲からないために中断されているそうです。もともと、アフリカ南部やインド、東南アジアなどの風土病だったものが、温暖化の影響かどうか不明ながら米国のフロリダ州など南部で流行の兆し、というわけ。注意しましょう。

映画上映前のスクリーンと観客のスマホが連動。衝撃的などっきりが展開される(香港)
カラパイア
ヤラセとも考えられるんだが、これはなかなか秀逸な試みです。安全運転の啓蒙にもなる。ただ、観客たちが映画のスクリーンの中で起きたことと、自分がスマホを取り出したことの関連性に気づくのにかなり時間がかかっているような感じ。字幕を読んで初めて自分の行為とスクリーンの中の映像がつながったんじゃないでしょうか。

Mercedes Details 2015 S-Class Coupe’s Curve Tilting Function
MOTOR AUTHORITY
カーブでチルトするファンクション、ということで、メルセデスベンツがバイクのようにバンクするサスペンションを作っているようです。カーブを曲がる際、クルマがオーバーステア(カーブの内側へ曲がり混み、スピンの原因になる)やアンダーステア(カーブを曲がりきれず、道から飛び出てる)になったりするんだが、これを適正に調整するため、過去に様々なサスペンションが考えられてきました。モータースポーツの世界では、すでにアクティブサスペンションの歴史があります。メルセデスベンツでも「マジックボディコントロール」なるシステムが実装されている。この記事ではさらにアクティブに作動する機構を開発中、と書いています。


アゴラ編集部:石田 雅彦