CDBの解体は過剰反応である

池田 信夫

久々に茂木健一郎氏と意見が一致したので、私も書いておこう。


客観的な証拠として報道されるかぎりでは、STAP細胞が捏造だったことは確実だ。特に冷凍庫から出てきたES細胞の遺伝子が若山氏に渡した細胞と同一だったという話が事実なら、小保方氏がいくら否認しても、刑事裁判なら有罪である。

しかし彼女は捏造を認めないだろう。それはこんな動かぬ証拠が冷凍庫に残っていたことでわかる。もし彼女に犯意があったら、発覚直後に遺伝子データもサンプルも、すべて破棄したはずだ。それが残っていたということは、彼女は(何かの理由で)自分が捏造したという事実を忘れたとしか考えられない。

茂木氏もいうように、そういう「非典型的な研究者」はたまにいる。研究者というのは変わり者の世界なので、変人はいくらでもいるのだ。そういう人の中に本物の天才もいるので、あまり性急に排除してはいけないが、サイコパスを「裏口採用」した上に、論文をちゃんとチェックしないで副センター長が共著者になってNatureに論文を出したのは失敗だった――問題はそこまでだ。

事件の原因は組織ぐるみの不正ではなく、病気を見抜けないで採用した理研の「非典型的な」人事にあるので、CDBを解体しても解決しないし、解体しなくても解決できる。人事システムを洗い直して責任者を処分すれば、同様の事件の再発は防げる。世間的には解体しないと「みそぎ」にならないかもしれないが、そんな応報感情で貴重な研究機関を解体すべきではない。