「対話を継続」させることこそ外交の要諦 --- 岡本 裕明

アゴラ

安倍首相の外遊先は9月に小泉元首相を超える49か国になるのですが、近隣国である中国、韓国、北朝鮮が残っていると数日前のブログで指摘させていただきました。その中国に対して思った以上に「画策」しているようであり、11月の北京で開催されるAPECの際に日中首脳会談の実現の可能性が高まってきました。

暗躍しているのは福田元首相。極秘で複数回、中国に出向いてその下地作りをしています。


一方の中国側。最近、日本へのバッシングもやや収まり、尖閣での挑発的行為も静かになっているように感じます。その理由は中国の内部事情によるものなのでしょうか? 特に政治局常務委員の周永康氏を失脚させれば江沢民派閥を一掃し、習近平体制は確固たるものになるとみられています。つまり、一部で言われている「毛沢東化」するプランがほぼ完成してしまいます。より神聖化される習近平国家主席が不動の地位を確保できれば日本とのディールもしやすくなるという見方もあるようです。

非常に難しい外交交渉と駆け引きが必要でしょうが、APECでの首脳会議は5割以上の確率であり得るかもしれないと思っています。一時は安倍首相の訪中そのものが危ぶまれていたわけですから日本の外交能力も捨てたものではないのでしょう。

このブログのお読みの方は日本が中国と積極的に外交関係を結ぶ必要性について疑問視する方も多いでしょう。しかし、13億人もの人口はアメリカの4倍以上で経済、社会、外交、国防を含めその影響力は果てしないものがあります。少なくとも会話ができる関係にあり続けることが外交上最も重要なのです。

例えばオバマ大統領とプーチン大統領は先日も電話会談を行っています。双方の意見は相変わらずすりあわないようですが、お互いが確認したのは「今後も電話会談は続けよう」であります。つまり、喧嘩して頑なになるのではなく、徹底的に議論を尽くすという姿勢は外交上絶対に必要なプロセスなのであります。

悪い方の例としてはハマスとイスラエルの関係でしょうか? 双方のコミュニケーションができず、エジプトやアメリカが仲介に入るという難しいプロセスが不調になったことであのような惨劇が起きています。ウクライナもある意味それに近いわけでいかに双方が胸襟を開くことに意味があるかお分かりいただけると思います。

舛添要一知事が朴瑾惠大統領のところにわざわざ出向いて会談をしたことが酷く批判されています。目先だけ見ればそういう気持ちになるのは分かります。が、私はこれで日本外交が対韓国に主導権を確保した決定打になったかもしれないと思っています。つまり、中国には福田元首相、韓国には舛添要一氏を送り込んで下地をきちんと作り上げ、仮に日中首脳会談が11月にできるようならば朴大統領はもはや将棋で詰んでしまった状態になるのです。そこまで先を読めば一時的に舛添氏が国内で悪役になっていますが、ここは耐え忍んでいただくしかありません。

外交には緩急をつけながら望むのがベスト。戦前の日本外交史を研究すると実に奥深いものを見て取れます。個人的には外務省出身の幣原喜重郎元首相を非常に高く買っていますが、当時、そして戦後を通じて氏の外交手腕は「軟弱外交」として評価は低いように感じます。吉田茂氏のようにイギリス万歳と言っていたようなやんちゃな外交官がむしろ、最終的には高く見られていますがそれは時代背景が押したものもあるのでしょう。

ただ確実に言えることは会話をしようとする姿勢が外交の第一歩であることは間違いありません。それは決して「軟弱外交」ではなく、むしろ、強気の姿勢であると考えています。その流れからすると安倍首相の近隣国に対する「努力」は必ず花咲くと信じております。この点に於いても安倍首相を評価しております。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年8月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。