フランスの国民的ファッションデザイナー、イヴ・サンローランの激動の人生を描いた作品がフランスで話題だという。以前ファッション誌のエディターだった私も、彼が一人ではなく、そのパートナーとしてピエール・ベルジェが生涯横にいたということは知っていたが、この映画を観て、ここまで“寄り添って”いたということは知らなかった。
2010年に公開されたドキュメンタリー『イヴ・サンローラン(L’AMOUR FOU)』は本人やピエールも登場したドキュメンタリーだったが、今回はイヴ・サンローラン役に国立劇団コメディ・フランセーズに在籍するピエール・ニネを起用した劇場映画だ。
配給会社の用意したパンフレットを読むと「ピエール・ベルジェは、友人の紹介でイヴと出会い、すぐ恋におちる」とある。そうか、当時、1957年であれば、このような表現にはならず、もってまわった表現になるのだろうが、21世紀にもなれば男も女もなく「恋におちる」と表現されるわけだ。
ストーリーは、イヴとピエールの出会いからお互いの感情の葛藤、創作への苦悩が描かれたものとなっている。それにしてもこの映画、イヴ・サンローラン財団初公認作品とのこと。そのわりに、ここまで描いていいのか! と思うほどに、イヴの私生活を遠慮なく描いている。それら私たち一般庶民にはわからない世界のことなので、いくらでも創作できるだろうし、されるのだろうが、なんといっても「イヴ・サンローラン財団初公認作品」である。ほぼ真実に近いのだろうと思わせる。
創作のプレッシャーに耐えられずにドラッグ、酒、そして男に走るイヴ。でもしかし、そんななかでもあふれ出る才能は止まらない。年2回のオートクチュールのコレクションではしっかりと前衛的なデザインを発表していく。
才能があるがために多大なプレッシャーに押しつぶされそうな人生を横でピエールが、ときに見守り、また離れ、寄り添っていく。ファッション・デザイナーの物語ではあるが、ファッションというより、偉大なるクリエイターの人生の苦悩劇と思ったほうがいいのかもしれない。家族を持って、マイホームを持って、などという夢を見がちな庶民には到底想像もできない世界が繰り広げられる。
『イヴ・サンローラン』
監督:ジャリル・レスペール
出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ 、シャルロット・ル・ボン、ローラ・スメット、ニコライ・キンスキーほか。
公開:9/6(土)より角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネマライズ他全国ロードショー
配給:KADOKAWA
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