朝日新聞は「誤報」放置の「落とし前」をどうつけるのか --- 岡本 裕明

アゴラ

朝日新聞の慰安婦「言い訳報道」に関して各方面から様々な意見が出されています。特に自民党の歴史問題を考える議員連盟がこの問題について調査することを受けて今後、更なる展開があり得るのではないかと思います。

正直、あの記事が出た時、何とも言えない気持ちになっていました。「それはないだろう」ということでしょうか?

日本を代表する高級紙のはずの同紙がこのような極めて重要且つ疑義を生み続けてきた内容について32年間も放置したというのは許しがたき行為であります。それは日本だけでなく、近隣国にレバレッジが効いたかのように広く拡散し、そこからは果てしない無限の誤解のリンクで今日の不名誉な日本のポジションが作られたと言ってもよいでしょう。


主要5紙にはそれぞれの顔があります。私は昔から朝日は嫌いでした。商人の家でしたのでもちろん読売でありました。私が小さい頃、サラリーマン家庭は朝日が圧倒的だった記憶があります。今でもその傾向はあるのでしょうか。

80年代後半、産経は経営が苦しくもカラー刷りの新聞をいち早く取り入れ、主婦の新聞と揶揄していました(秘書時代、主要全紙と専門誌を見て重要記事のニュースクリップを朝9時までに作るのが日課でしたので様々な新聞と接していました)。産経は多分、ウェブの展開強化と右色が濃くなったことが部数回復のきっかけなのでしょうか? それに対して朝日はクオリティが落ちた気がしています。天声人語もムラがあったり、社説も時々、んっ、と思うようなこともあります。個人的には日経の春秋が好きですね。

さて、その朝日新聞、今後、落とし前をどうするつもりなのか、ということになると思います。つまり、誤報でした、という開き直りとも取れるあの記事の社会的影響を考えれば社長の国会喚問ぐらいして頂かないと困ります。戦前なら新聞は廃刊処分であったでしょう。今、企業がルールに違反すれば当然、厳しいペナルティがあることは当たり前です。新聞の社会的影響を考えると主義主張とは別に誤報を誤報と分かっていながらこれだけ長い間放置したのは犯罪行為であると言っても過言ではないのです。今、罪を認めたのですから当然の罰はあるべきだと思います。

ところで、最近プラス評価の多い産経ですが、あの朴大統領の空白の7時間の記事は頂けません。報道のその日に読ませていただいたのですが、あれは二流の週刊誌レベルです。支局長が韓国当局から呼び出しを受けたというにしてはあまりにもつまらないことで呼び出されたものであります。「書くことすらはばかれる…」というあの記事の元ネタが韓国の中で出回っていた既存情報を集めただけのようですから、産経の韓国支局は記者が独自で記事ネタを編めなかったということになってしまいます。自分の足できちんと調べていない記事は迫力がないのです。調べていればはっきり断言記事が書けるでしょう。あれは残念でした。

時々読売を見るのですが、どこを見るかというと巨人が勝った日のスポーツ欄でしょうか?(私は巨人ファンですから) あとはパラパラめくっても主婦の新聞ですから記事本文は軽すぎて私にはアペタイザーぐらいであります。もっとたらふく読ませてほしいというのが正直なところであります。ただ、社会面は面白いと思います。殺人事件の報道などはなかなか充実しているのではないでしょうか?

毎日新聞には特にコメントはありませんが、こうやって日本の新聞を並べて見ると主義主張からやはり、経営重視という姿勢に変わってきているかもしれません。面白い、目につく、エキストリーム系などインパクトがありウェブなどでも読者の目につき、クリックしやすいタイトルを戦略化しているように思えます。

新聞経営が苦しいのは世界どこでも同じです。一番の問題は配達コストでしょう。ここバンクーバーの日経新聞はローカル新聞の会社に配達させています。つまり、新聞を経営的に合理化するためには発電と送電の分離ならぬ新聞製作と配達を分離し、配達専門会社がどこの新聞でも配達すればよいのではないでしょうか?

新聞社はこのような工夫でまず、経営基盤を安定させた上でクオリティを上げてもらいたいというのが私の願いです。主要5社と称される読売、朝日、毎日、日経、産経が合併などで三つぐらいになってもよいでしょう。例えば日経と産経はともに経済新聞を起点としており、一緒にすると互換性があって面白い組み合わせになると思うのですが。

日経の強みは専門誌ならではの調査力と記事の奥行きかと思います。日経ビジネスと抱き合わせで読むとよくわかるのですが、日経ビジネスで先行して記事にしてその一部を新聞で掲載することはよく見かけます。また、かなり蓄えたと思われる取材内容は日経ビジネスでしっかり読み込むことができます。更に電子版での速報なども加えれれば少なくともビジネスマンには重宝する組み合わせだと思います。

多分、週刊朝日、サンデー毎日が本来日経ビジネスと同等扱いなのでしょうが、週刊読売が廃刊したように週刊誌は週刊誌の世界がある気がします。特にここ数年の週刊文春は過激に思えます。取材能力はすごいの一言に尽きます(問題も多かったようですが)。記事に汗のにおいを感じます。これぐらいなら買ってみたい気にさせます。

日本人という読み手の質も高く、最近ではブログでも優秀な内容のものが増えてきています。有料であるメディアの抜本的な経営体質の改善を伴う質の向上が優先課題になるのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年8月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。