資源バブルに踊った企業を悩ませるその後始末 --- 岡本 裕明

アゴラ

住友商事がアメリカのシェールガス開発に絡む損失などを2400億円も計上し、今期の連結純利益が2500億円の予想からわずか100億円に減ることを発表しました。シェール関連だけで1700億円も損失を計上するその理由は「ガスが思ったほど出なかった」というもの。

アメリカのシェール関連に資金を突っ込んだ日本企業はたくさんあり、その多くが既に損失を計上しています。14年3月期で損失計上したのは三井物産、伊藤忠、丸紅、大阪ガスなどでしょうか? どこも巨額になっています。今回の住友商事の損失計上もそのライン上にあるかと思います。


シェールガスの発掘は新しい技法であるし、まさに1800年代半ばに男たちが金鉱を探し求めて行ったのと同様、北米で雨後の筍の様にその開発競争が進んでいます。それは思ったほど確度が高くないにも拘わらず、遅れまいとした日本企業に思わぬ落とし穴があったとも言えましょう。

ただ日本の商社が投資にいそしんだのはシェールガスだけではありません。あらゆる資源に対して巨額な資金が投入されたものの「市況のゆるみ」が思わぬ損失になっている状況にあります。個人的にはもう少し損失が出てきてもおかしくないとみています。商社で膿を出し切っていないところもありそうです。

商社はその投資資金の5割近くを資源開発に回してきた経緯があり、一部の商社ではその行き過ぎ、あるいはポートフォリオのバランスの悪さから調整に入っていたところもあります。三菱商事などはその典型でしょうか?

ではなぜ、商社はこぞってそこまで資源開発に資金を振り向けたか、といえばいくつかの理由が思い浮かびます。

中国発のレアメタル問題で代替資源の開発を急ぐ必要があったこと
世界的な資源ブームがあったこと、特に中国のブームに市場の深さを見誤ったこと。
日本の震災後、電力の化石燃料の輸入価格上昇に伴う投資機会の到来
商社が巨額の資金を投じて成長投資をする案件がそう多くない中で資源は飛びつきやすい案件であったこと
そして金融緩和で資金を投じやすかったこと

特に最後の金融緩和による資金という点では日本に限らず世界規模でありました。カナダのジュニアマイニング(中小の鉱山会社)はこの4、5年、買収に次ぐ買収でまさに戦国時代にあったと言っても過言ではありません。それこそ、あまりの頻度で「あれ、あの会社はどこに行ったの?」ということが起きていたのです。

これも金融緩和による買収資金の調達のしやすさ、その上、資源価格が上昇基調にあったことが大きかったと思われます。

バブルとは我々の周りでは思った以上に頻繁に発生しています。80年代後半の日本のバブル、2000年のドットコムバブル、2004、5年ごろの北米住宅バブル、そして2011年の金価格が1900ドル台になった頃のいわゆる資源バブル、更にはそれを引きずってシェールバブルとも言えそうです(私はアメリカの現在の自動車ローンは明らかにバブルの源泉ですから、2014年は自動車バブルを付け加えたいと思っています)。

資源バブルの崩壊に関してはもう一つ、中国でシェールがうまく開発できないこともあるかと思います。シェールは水を大量に使う上に土壌汚染の可能性が指摘されています。中国は兎にも角にも水が不足していますからシェール開発には向かないという事になります。そして中国不動産の低迷も資源需要を下押ししています。

金融緩和は資源バブルを招いたか、といえば間接的にYESでしょう。もちろん金融当局が関知したことではなく、金融緩和→投資リターンの低下→ハイリスクハイリターンへの傾注→資源事業などへの資金投下という一連のシナリオでしょうか? ましてやアメリカがその緩和姿勢をノーマルに戻していくわけですからバブルの始末は早めにするに越したことがないのです。

注意しなくてはいけないのは上述の企業はバブルの始末ができる体力がある企業群だという事です。ここに名前が出ていないところは損を吸収できない問題を抱えるところも出てくるかもしれません。むしろそれの方が始末に困ることになりそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年9月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。